第七十篇  題目 急ぎ給へ



伶長うたのかみにうたはしめたるダビデの記念のうた

  1. 神よねがはくはわれをすくひたまへ ヱホバよとくきたりてわれをたすけたまへ
  2. わが靈魂たましひをたづぬるもののはぢあわてんことを わがそこなはるゝをよろこぶもののうしろにしりぞきて恥をおはんことを
  3. あゝよやよやといふもののおのが恥によりてうしろにしりぞかんことを
  4. すべてなんぢをたづねもとむる者のなんぢによりてたのしみよろこばんことを なんぢのすくひをしたふもののつねに神はおほいなるかなととなへんことを
  5. われは苦しみかつともし 神よいそぎてわれにきたりたまへ なんぢはわがたすけわれを救ふものなり ヱホバよねがはくは猶豫ためらひたまふなかれ

 本篇に Make haste(急ぎ給へ)あるひこれに類することば數度記さる。英譯には一節の最初にもあり。
 『神よねがはくは(とくきたりて)我をすくひたまへ
  ヱホバよとくきたりて我をたすけたまへ』(一)
 『神よいそぎて我にきたりたまへ……
  ヱホバよねがはくは猶豫ためらひたまふなかれ』(五)
 すなは四度よたび神に對して急ぎ給はん事を督促す。かゝ祈禱いのりを捧ぐるはじつに大膽なる事なり。れど神はかゝる遠慮なき大膽なる祈禱いのりを喜びよみし給ふなり。信仰ある者は常にかゝ祈禱いのりを捧ぐ。不信仰は今なるを要せざるも、信仰は常に今、急ぎ給へと祈るなり



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