第九十一篇  題目 全能者のかげ (一)



  1. 至上者いとたかきもののもとなる隱れたるところにすまふその人は全能者ぜんのうしゃかげにやどらん
  2. われヱホバのことをのべて ヱホバはわが避所さけどころわが城わがよりたのむ神なりといはん
  3. そは神なんぢを獵人かりうどのわなと毒をながす疫癘えやみよりたすけいだしたまふべければなり
  4. かれそのはねをもてなんぢをおほひたまはん なんぢそのつばさしたにかくれん その眞實まことたてなりこだてなり
  5. よるはおどろくべきことあり 晝はとびきたる矢あり
  6. 幽暗くらきにはあゆむ疫癘えやみあり 日午ひるにはそこなふはげしきやまひあり されどなんぢおそるゝことあらじ
  7. 千人せんにんはなんぢの左にたふれ萬人ばんにんはなんぢの右にたふる されどその災害わざはひはなんぢに近づくことなからん
  8. なんぢのはたゞこの事をみるのみ なんぢ惡者あしきもののむくいを見ん
  9. なんぢさきにいへり ヱホバはわが避所さけどころなりと なんぢ至上者いとたかきものをその住居すまひとなしたれば
  10. 災害わざはひなんぢにいたらず苦難なやみなんぢの幕屋まくやに近づかじ
  11. そは至上者いとたかきものなんぢのためにその使者輩つかひたちにおほせて なんぢがあゆむもろもろの道になんぢを守らせ給へばなり
  12. かれら手にてなんぢの足の石にふれざらんためになんぢをさゝへん
  13. なんぢはしゝまむしとをふみ壯獅わかきしゝと蛇とを足のしたにふみにじらん
  14. かれその愛をわれにそゝげるがゆゑにわれこれを助けん かれわがをしるがゆゑにわれこれを高處たかきところにおかん
  15. かれわれをよばゞわれこたへん われその苦難なやみのときにともにをりてこれをたすけこれをあがめん
  16. われ長壽ながきいのちをもてかれをたらはしめかつわがすくひをしめさん

 本篇は神の至聖所しせいじょに宿る事を歌へる詩なり。
▲二節と十四節とを對照せよ。二節において詩人はヱホバの事をべしが、十四節においてヱホバは詩人の事をべ給ふ。我等も神の事をあかしする時我等の事に關する神の約束を聞く事を得るなり。
▲十四〜十六節に神を愛し又神を信ずる者に與へらるゝなゝつ恩惠めぐみ約束せらる。
 『彼その愛をわれにそゝげるがゆゑに』──すなはち神を愛するがゆゑ
 『かれわが名をしるがゆゑに』──すなはち神を信ずるがゆゑ
一、援助たすけ(十四はじめ)──『彼その愛をわれにそゝげるがゆゑに我これを助けん』
二、天のところの生涯(十四をはり)──『かれわが名をしるがゆゑに我これを高處たかきところにおかん』(エペソ二・六參照)
三、祈禱いのりこたへ(十五はじめ)──『かれ我をよばゞ我こたへん』
四、慰藉なぐさめ(十五中程)──『我その苦難なやみのときにともにをりてこれをたすけ』
五、神のほまれ(十五をはり)──『これをあがめん』(黙示録三・五をはり參照)
六、ゆたかなる生命いのち(十六はじめ)──『われ長壽ながきいのちをもてかれをたらはしめ』
七、啓示しめし(十六をはり)──『かつわがすくひをしめさん』
 神を愛し又神を知りてこれに信賴する者には以上のなゝつめぐみ約束せらる。



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