第廿七篇  題目 一事の願 (四)



  1. ダビデの歌
    ヱホバはわが光 わが救なり われ誰をかおそれん ヱホバはわが生命のちからなり わが懼るべきものはたれぞや
  2. われの敵われの仇なるあしきもの襲ひきたりてわが肉をくらはんとせしが蹶きかつ仆れたり
  3. 縦(たと)ひいくさびと營をつらねて我をせむるともわが心おそれじ たとひ戰ひおこりて我をせむるとも我になほ恃(たのみ)あり
  4. われ一事(ひとつのこと)をヱホバにこへり我これをもとむ われヱホバの美(うるは)しきを仰ぎその宮をみんがためにわが世にあらん限りはヱホバの家にすまんとこそ願ふなれ
  5. ヱホバはなやみの日にその行宮(かりいほ)のうちに我をひそませ その幕屋のおくにわれをかくし巖のうへに我をたかく置たまふべければなり
  6. 今わが首はわれをめぐれる仇のうへに高くあげらるべし この故にわれヱホバのまくやにて歡喜(よろこび)のそなへものを獻ん われうたひてヱホバをほめたゝへん
  7. わが聲をあげてさけぶときヱホバよきゝ給へ また憐みてわれに應へたまへ
  8. なんぢらわが面をたづねもとめよと(斯る聖言のありしとき)わが心なんぢにむかひてヱホバよ我なんぢの聖顏をたづねんといへり
  9. ねがはくは聖顏をかくしたまふなかれ 怒りてなんぢの僕をとほざけたまふなかれ 汝はわれの助なり 噫(あゝ)わがすくひの神よ われをおひいだし我をすてたまふなかれ
  10. わが父母われをすつるともヱホバわれを迎へたまはん
  11. ヱホバよなんぢの途をわれにをしへ わが仇のゆゑに我をたひらかなる途にみちびきたまへ
  12. いつはりの證をなすもの暴厲(あらび)を吐もの我にさからひて起りたてり 願くはわれを仇にわたしてその心のまゝに爲しめたまふなかれ
  13. われもしヱホバの恩寵(いつくしみ)をいけるものの地にて見るの恃なからましかば奈何(いかに)ぞや
  14. ヱホバを俟望ぞめ雄々しかれ汝のこゝろを堅うせよ 必ずやヱホバをまちのぞめ

 一事(ひとこと)の願はキリストに居る事を求むる願也。
▲本篇の分解
 (一〜三)キリスト、心の中に宿る
 (四〜六)キリストの中に宿る
 (七〜十)其恩惠を求む──(其聖顏を求む)
 (十一、十二)其途を求む
 (十三、十四)得たりとの信仰
 一節より六節は新約にある「キリスト我に居り我また彼に居る」との尊き經驗を指す也。
▲一節に主を宿したる者の經驗記さる。即ち
 ヱホバはわが光       |   |われ誰をかおそれん
     わが救なり     |是故に|わが懼るべきものはたれぞや
     わが生命のちからなり|   |わが心おそれじ(三節)
▲基督者(クリスチャン)の聖潔の生涯に必要なるもの三つあり
  救  |  |我は道なり
  光  |此は|  眞理なり
  力  |  |  生命なり──とある其三つ也。
▲キリストの中に居る結果は
一、其美しき德を見る(四)──『われヱホバの美しきを仰ぎ』
二、祈禱に於て近づく(四終)──『その宮をみんがためにわが世にあらん限りはヱホバの家にすまん』
三、悲哀(かなしみ)の時慰藉(なぐさめ)を得(五始)──『ヱホバはなやみの日にその行宮のうちに我をひそませ その幕屋のおくにわれをかくし』
四、確信を有す(五終)──『巖のうへに我をたかく置たまふべければなり』
五、勝利を得(六始)──『わが首はわれをめぐれる仇のうへに高くあげらるべし』
六、歡喜に滿さる(六終)──『この故にわれヱホバのまくやにて歡喜のそなへものを獻ん われうたひてヱホバをほめたゝへん』
▲『一つの事』(四節)に就て以下の引照を見よ。
一、マルコ十・廿一=一つの缺乏──『イエス彼に目をとめ、愛しみて言ひ給ふ「なんぢ尚ほ一つ(one thing)を缺く」』
二、ルカ十・四十二=一つの必要なる恩惠──『無くてならぬものは多からず、唯一つ(one thing)のみ』
三、詩廿七・四=一つの祈願(ねがひ)──『われ一事(one thing)をエホバにこへり我これをもとむ』
四、ピリピ三・十三=一つの目標──『唯この一事(one thing)を務む、即ち後のものを忘れ、前のものに向ひて勵み』



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