第二十篇



伶長うたのかみにうたはしめたるダビデのうた

  1. ねがはくはヱホバなやみの日になんぢにこたへヤコブのかみのみななんぢをたかきにあげ
  2. 聖所せいじょより援助たすけをなんぢにおくりシオンより能力ちからをなんぢにあたへ
  3. なんぢのもろもろの獻物さゝげものをみこゝろにとめ なんぢの燔祭はんさいをうけたまはんことを セラ
  4. ねがはくはなんぢがこゝろの願望ねがひをゆるし なんぢの謀略はかりごとをことごとくとげしめたまはんことを
  5. 我儕われらなんぢのすくひによりてよろこびうたひ われらの神のみなによりて旗をたてん ねがはくはヱホバなんぢのもろもろのもとめをとげしめたまはんことを
  6. われ今ヱホバその受膏者じゅかうじゃをすくひたまふを知る ヱホバそのきよき天より右手みぎのてなるすくひの力にてかれにこたへたまはん
  7. あるひは車をたのみ あるひはむまをたのみとする者あり されどわれらはわが神ヱホバのみなをとなへん
  8. かれらはかゞみまたたふる われらはおきてかたくたてり
  9. ヱホバよ王をすくひたまへ われらがよぶときこたへたまへ

 本篇は友人の爲に祈る禱告とりなし祈禱いのり(一〜四)とその祈られたる人の信仰のこたへなり(五〜八)。
▲一節より四節まで祈禱いのりやつねがひ記さる。
一、祈禱いのりの答へらるゝやう(一はじめ)──『ねがはくはヱホバなやみの日になんぢにこたへ』
二、天のところに擧げらるゝやう(一をはり)──『ヤコブのかみのみななんぢをたかきにあげ』
三、助けらるゝやう(二はじめ)──『聖所より援助たすけをなんぢにおくり』
四、力づけらるゝやう(二をはり)──『シオンより能力ちからをなんぢにあたへ』
五、おぼえらるゝやう(三はじめ)──『汝のもろもろの獻物さゝげものをみこゝろにとめ』
六、受納うけいれらるゝやう(三をはり)──『なんぢの燔祭はんさいをうけたまはんことを』(祭物さゝげもの受納うけいれられし時には天より火くだりてこれ焼盡やきつくせり、すなはこれは獻身せる者の上にペンテコステのほのほくだらん事を祈れるなり。)
七、滿足の與へらるゝやう(四はじめ)──『ねがはくはねんぢがこゝろの願望ねがひをゆるし』
八、はたらきの祝福せらるゝやう(四をはり)──『なんぢの謀略はかりごとをことごとくとげしめたまはんことを』
▲五節以下八節まではかく祈られたる人が信仰をもって答ふる所なり。
一、喜悅よろこびを抱く(五はじめ)──『我儕われらなんぢのすくひによりてよろこびうたひ』
二、進擊的に進む(五中程)──『われらの神のみなによりて旗をたてん』
三、確信を得(六はじめ)──『われ今ヱホバその受膏者をすくひたまふを知る』
四、希望を握る(六をはり)──『ヱホバそのきよき天より右手みぎのてなるすくひの力にてかれにこたへたまはん』
五、かたく神に信賴す(七)──『あるひは車をたのみ あるひはむまをたのみとする者あり されどわれらはわが神ヱホバのみなをとなへん』
▲本篇のうちに『神のみな』につい三度みたび記さる。
(1) 一節、『ヤコブのかみのみななんぢをたかきにあげ』──罪のうちより救出すくひいだされて天のところまで擧げらるゝ事
(2) 五節、『われらの神のみなによりて旗をたてん』──罪人つみびとの前に神の聖名みなを表す事。ガラテヤ三・一はパウロが神の御名みなによりて旗をたてたる所なり
(3) 七節、『われらはわが神ヱホバのみなをとなへん』──の物に依賴よりたのむ事を捨てゝたゞ神の御力みちからにのみ依賴よりたのむ事



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