第二十八篇



ダビデの歌

  1. あゝヱホバよわれなんぢをよばん わがいはよねがはくはわれにむかひて暗啞おふしとなりたまふなかれ なんぢもだしたまはゞ恐らくはわれ墓にいるものとひとしからん
  2. われなんぢにむかひてさけび聖所せいじょの奥にむかひて手をあぐるときわが懇求ねがひのこゑをきゝたまへ
  3. あしき人また邪曲よこしまをおこなふ者とともにわれをとらへてひきゆき給ふなかれ かれらはその隣にやはらぎをかたれども心には殘害そこなひをいだけり
  4. そのわざにしたがひそのなす惡にしたがひて彼等にあたへ その行爲なしわざにしたがひてあたへこれにそのうくべきものを報いたまへ
  5. かれらはヱホバのもろもろのわざとそのみてのなしわざとをかへりみず このゆゑにヱホバかれらをこぼちてたてたまふことなからん

  6. ヱホバはほほむべきかな わがいのりのこゑをきゝたまひたり
  7. ヱホバはわが力わがたてなり わがこゝろこれに依賴よりたのみたればわれたすけをえたり るゆゑにわが心いたくよろこぶ われ歌をもてほめまつらん
  8. ヱホバはそのたみのちからなり その受膏者じゅかうじゃのすくひの城なり
  9. なんぢのたみをすくひ なんぢの嗣業ゆづりをさきはひかつこれをやしなひこれをとこしなへにいだきたすけたまへ

▲本篇の分解
 (一〜五)困難のうちよりいづ絕叫さけび
 (六)  祈禱いのりの聴かれたる確信
 (七、八)感謝
 れ信仰の祈禱いのりの順序なり。
▲一節と二節とを對照せよ。
 神の聖聲みこゑを聞く事を得させ給へとの祈禱いのり(一)──『ねがはくは我にむかひて暗啞おふしとなりたまふなかれ なんぢもだしたまはゞ恐らくはわれ墓にいるものとひとしからん』
 わが聲を聞き給へとの祈禱いのり(二)──『われなんぢにむかひてさけび聖所の奥にむかひて手をあぐるときわが懇求ねがひのこゑをきゝたまへ』
▲本篇中に善惡両樣の人の特質を見るを
一、あしき者の特質
 (1) 神の聲を聞かず(一をはり)──『なんぢもだしたまはゞ恐らくはわれ墓にいるものとひとしからん』(すなはのぞみなくして墓にる者は神の聖聲みこゑをきく事なきなり
 (2) 墓に行きてのぞみなし(一をはり)──『恐らくは墓にいるものとひとしからん』(詩人はあしき者がのぞみなくして死すると等しかるべきを恐れしなり
 (3) 邪曲よこしまを行ふ(三)──『あしき人また邪曲よこしまをおこなふ者……』
 (4) 心に殘害そこなひを抱く(三をはり)──『かれらはその隣にやはらぎをかたれども心には殘害そこなひをいだけり』
 (5) 神の審判さばきを受く(四)──『そのわざにしたがひそのなす惡にしたがひて彼等にあたへ その手の行爲なしわざにしたがひて與へこれにそのうくべきものを報いたまへ』
 (6) 神のわざを顧みず(五はじめ)──『かれらはエホバのもろもろのわざとそのみてのなしわざとをかへりみず』
 (7) 滅さる(五をはり)──『このゆゑにヱホバかれらをこぼちてたてたまふことなからん』
二、神をおそれ敬ふ者の特質
 (1) 神のもだし給ふ事をおそる(一)──『ねがはくは我にむかひて暗啞おふしとなりたまふなかれ なんぢもだしたまはゞ恐らくは……』
 (2) その祈禱いのりは聴かる(六)──『ヱホバはほむべきかな わがいのりのこゑをきゝたまひたり』
 (3) ヱホバに信賴しこれを誇る(七はじめ)──『ヱホバはわが力わがたてなり わがこゝろこれに依賴よりたのみたれば我たすけをえたり』
 (4) 喜び勇む(七中程)──『るゆゑにわが心いたくよろこぶ』
 (5) 神をむ(七をはり)──『われ歌をもてほめまつらん』
 (6) 自己おのれに信賴する心を捨つ(八)──『ヱホバはその民のちからなり その受膏者のすくひの城なり』
 (7) リバイバルを待望まちのぞむ(九)──『なんぢの民をすくひ なんぢの嗣業ゆづりをさきはひ……たまへ』
▲九節によつ祈禱いのりあり。
一、すくひを祈る──『なんぢの民をすくひ』──十字架によりて
二、祝福を祈る──『なんぢの嗣業ゆづりをさきはひ』──ペンテコステによりて
三、滿足を祈る──『かつこれをやしなひ』──昇天の救主すくひぬしによりて
四、天國に擧げらるゝ事を祈る──『これをとこしなへにいだきたすけたまへ』──新郎はなむこたる主によりて
 主は第一、救主すくひぬしとして
   第二、所有主もちぬしとして
   第三、牧者として
   第四、再臨の王として──是等これら祈禱いのりに答へ給ふなり



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