第六十一篇 題目 碎けたる心より出る信仰の叫
琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた
- あゝ神よねがはくはわが哭聲をきゝたまへ わが祈にみこゝろをとめたまへ
- わが心くづほるゝとき地のはてより汝をよばん なんぢ我をみちびきてわが及びがたきほどの高き磐にのぼらせたまへ
- なんぢはわが避所われを仇よりのがれしむる堅固なる櫓なればなり
- われ永遠になんぢの帷幄にすまはん 我なんぢの翼の下にのがれん セラ
- 神よなんぢはわがもろもろの誓をきゝ 名をおそるゝものにたまふ嗣業をわれにあたへたまへり
- なんぢは王の生命をのばし その年を幾代にもいたらせたまはん
- 王はとこしへに神のみまへにとゞまらん ねがはくは仁慈と眞實とをそなへて彼をまもりたまへ
- さらば我とこしへに名をほめうたひて日ごとにわがもろもろの誓をつくのひ果さん
一、憐れなる狀態より神に祈る(一、二)。其人の狀態は
(1)殆んど喪心せり──『わが心くづほるゝとき』
(2)神に遠ざかれり──『地のはてより汝をよばん』
二、神に依賴む(三、四)──『なんぢは
(1)わが避所
(2)われを仇よりのがれしむる堅固なる櫓なればなり われ永遠に
(3)なんぢの帷幄にすまはん 我
(4)なんぢの翼の下にのがれん』
三、祈禱によりて恩惠を得(五〜七)
(1)信じて神の答を受入れたり、故に恩惠の嗣業を得──『神よなんぢはわがもろもろの誓をきゝ 名をおそるゝものにたまふ嗣業をわれにあたへたまへり』
(2)生命を得──『なんぢは王の生命をのばし その年を幾代にもいたらせたまはん』
(3)神の保護を得──『王はとこしへに神のみまへにとゞまらん ねがはくは仁慈と眞實とをそなへて彼をまもりたまへ』
四、感謝と獻身(八)──『さらば我とこしへに名をほめうたひて日ごとにわがもろもろの誓をつくのひ果さん』
第一に神に遠ざかれり、然れど第二に神に依賴み、而して第三に祈禱は答へられて恩惠を得るが故に、第四に感謝と獻身をなす。是れ信仰による祈禱の順序なり。
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