第七十四篇 題目 罪の結果を見て祈る禱告
アサフの敎訓のうた
- 神よいかなれば汝われらをかぎりなく棄たまひしや 奈何ばなんぢの草苑の羊にみいかりの煙あがれるや
- ねがはくは往古なんぢが買求めたまへる公會 ゆづりの支派となさんとて贖ひたまへるものを思ひいでたまへ 又なんぢが住たまふシオンの山をおもひいで給へ
- とこしへの滅亡の跡にみあしを向たまへ 仇は聖所にてもろもろの惡きわざをおこなへり
- なんぢの敵はなんぢの集のなかに吼たけびおのが旗をたてて誌とせり
- かれらは林のしげみにて斧をあぐる人の狀にみゆ
- いま鉞と鎚とをもて聖所のなかなる彫刻めるものをことごとく毀ちおとせり
- かれらはなんぢの聖所に火をかけ名の居所をけがして地におとしたり
- かれら心のうちにいふ われらことごとく之をこぼちあらさんと かくて國内なる神のもろもろの會堂をやきつくせり
- われらの誌はみえず預言者も今はなし 斯ていくその時をかふべき われらのうちに知るものなし
- 神よ敵はいくその時をふるまでそしるや 仇はなんぢの名をとこしへに汚すならんか
- いかなれば汝その手みぎの手をひきたまふや ねがはくは手をふところよりいだしてかれらを滅したまへ
- 神はいにしへよりわが王なり すくひを世の中におこなひたまへり
- なんぢその力をもて海をわかち水のなかなる龍の首をくだき
- 鰐のかうべをうちくだき野にすめる民にあたへて食となしたまへり
- なんぢは泉と水流とをひらき 又もろもろの大河をからしたまへり
- 昼はなんぢのもの 夜も又汝のものなり なんぢは光と日とをそなへ
- あまねく地のもろもろの界をたて夏と冬とをつくりたまへり
- ヱホバよ仇はなんぢをそしり愚かなる民はなんぢの名をけがせり この事をおもひいでたまへ
- 願くは なんぢの鴿のたましひを野のあらき獸にわたしたまふなかれ 苦しむものの命をとこしへに忘れたまふなかれ
- 契約をかへりみたまへ 地のくらきところは强暴の宅にて充たればなり
- ねがはくは虐げらるゝものを慚退かしめ給ふなかれ 惱るものと苦しむものとに聖名をほめたゝへしめたまへ
- 神よおきてなんぢの訟をあげつらひ愚かなるものの終日なんぢを謗れるをみこゝろに記たまへ
- なんぢの敵の聲をわすれたまふなかれ 汝にさからひて起りたつ者のかしがましき聲はたえずあがれり
本篇は罪の結果の見ゆる時に捧ぐべき禱告の祈禱なり。格別に敎會の中に罪あるを見て捧ぐべき禱告の祈禱なり。
▲本篇の要點は以下の如し。
一、神を離れし事を歎きて祈る(一)──『神よいかなれば汝われらをかぎりなく棄たまひしや 奈何ばなんぢの草苑の羊にみいかりの煙あがれるや』
二、過去の恩惠を追想して祈る(二)
1.贖──『ねがはくは往古なんぢが買求めたまへる公會 ゆづりの支派となさんとて贖ひたまへるものを思ひいでたまへ』
2.臨在──『又なんぢが住たまへる(日本譯の「住たまふ」とあるは hast dwelt「住たまへる」也)シオンの山をおもひいで給へ』
三、敵のなしたる行爲を述べて祈る(三〜十一)
四、神がなし給へる事を祈禱の中に述ぶ(十二〜十七)
五、禱告の祈禱(十八〜廿三)
▲十八〜廿三節迄の部分を注意して見よ、是れ禱告の祈禱の標本なり。
一、敵の力を覺えて祈る(十八)──『ヱホバよ仇はなんぢをそしり愚かなる民はなんぢの名をけがせり この事をおもひいでたまへ』
二、神の御慈愛を覺えて祈る(十九)──『願くはなんぢの鴿のたましひを野のあらき獸にわたしたまふなかれ 苦しむものの命をとこしへに忘れたまふなかれ』(惡魔の攻擊は野の荒き獸が鴿を捕ふるが如し、然れど神は我等を己の鴿として愛し給ふ)
三、神の約束を覺えて祈る(廿)──『契約をかへりみたまへ 地のくらきところは强暴の宅にて充たればなり』
四、神の榮光を覺えて祈る(廿二)──『神よおきてなんぢの訟をあげつらひ愚かなるものの終日なんぢを謗れるをみこゝろに記たまへ』(敵の謗を思ひ聖榮の爲に祈る也)
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