第七十六篇 題目 神は勝利者也
琴にあはせて伶長にうたはしめたるアサフの歌なり 讃美なり
- 神はユダにしられたまへり その名はイスラエルに大なり
- またサレムの中にその幕屋あり その居所はシオンにあり
- 彼所にてかれは弓の火矢ををり盾と劍と戰陣とをやぶりたまひき セラ
- なんぢ榮光あり 掠めうばふ山よりもたふとし
- 心のつよきものは掠めらる かれらは睡にしづみ勇ましきものは皆その手を見うしなへり
- ヤコブの神よなんぢの叱咜によりて戰車と馬とともに深睡につけり
- 神よなんぢこそ懼るべきものなれ 一たび怒りたまふときは誰かみまへに立えんや
- なんぢ天より宣告をのりたまへり
- 地のへりくだる者をみなすくはんとて神のさばきに立たまへるとき地はおそれて黙したり セラ
- 實に人のいかりは汝をほむべし 怒のあまりは汝おのれの帶としたまはん
- なんぢの神ヱホバにちかひをたてて償へ そのまはりなるすべての者はおそるべきヱホバに禮物をさゝぐべし
- ヱホバはもろもろの諸侯のたましひを絕たまはん ヱホバは地の王たちのおそるべき者なり
本篇は神がアッスリヤの王セナケリブと其軍隊を鏖殺にし給へる時(王下十九・卅五)に歌へる詩なり。靈的意味に於ては主イエスが十字架上に於て全き勝利を得給へる事に適合す。
▲本篇の要點
一、神は誰の爲に働き給ふや(一、二)
1.神を知る者の爲──『神はユダにしられたまへり』
2.神を崇むる者の爲──『その名はイスラエルに大なり』
3.神に近づく者の爲──『またサレムの中にその幕屋あり』
4.其御臨在を覺ゆる者の爲──『その居所はシオンにあり』
二、神の全き勝利(三〜六)──ロマ六・六、コロサイ二・十四、十五對照。
三、神を畏れざる可らざる事(七〜十)
四、神に獻身すべき事(十一、十二)
▲本篇に『懼るべき』(feared; または『おそれて』)という語四度出づ。
七節始──『神よなんぢこそ懼るべきものなれ』
九節終──『神のさばきに立たまへるとき地はおそれて黙したり』
十一節終──『すべての者はおそるべきヱホバに禮物をさゝぐべし』
十二節終──『ヱホバは地の王たちのおそるべき者なり』
聖靈は此短き本篇に四度も此語を宣ふが故に、我等此各の語に注意し、我等も神を畏るべきなり。
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