第九十一篇 題目 全能者の蔭 (一)
- 至上者のもとなる隱れたるところにすまふその人は全能者の蔭にやどらん
- われヱホバのことを宣て ヱホバはわが避所わが城わがよりたのむ神なりといはん
- そは神なんぢを獵人のわなと毒をながす疫癘よりたすけいだしたまふべければなり
- かれその翮をもてなんぢを庇ひたまはん なんぢその翼の下にかくれん その眞實は盾なり干なり
- 夜はおどろくべきことあり 晝はとびきたる矢あり
- 幽暗にはあゆむ疫癘あり 日午にはそこなふ勵しき疾あり されどなんぢ畏るゝことあらじ
- 千人はなんぢの左にたふれ萬人はなんぢの右にたふる されどその災害はなんぢに近づくことなからん
- なんぢの眼はたゞこの事をみるのみ なんぢ惡者のむくいを見ん
- なんぢ曩にいへり ヱホバはわが避所なりと なんぢ至上者をその住居となしたれば
- 災害なんぢにいたらず苦難なんぢの幕屋に近づかじ
- そは至上者なんぢのためにその使者輩におほせて 汝があゆむもろもろの道になんぢを守らせ給へばなり
- かれら手にてなんぢの足の石にふれざらんために汝をさゝへん
- なんぢは獅と蝮とをふみ壯獅と蛇とを足の下にふみにじらん
- 彼その愛をわれにそゝげるがゆゑに我これを助けん かれわが名をしるがゆゑに我これを高處におかん
- かれ我をよばゞ我こたへん 我その苦難のときに偕にをりて之をたすけ之をあがめん
- われ長壽をもてかれを足はしめ且わが救をしめさん
本篇は神の至聖所に宿る事を歌へる詩なり。
▲二節と十四節とを對照せよ。二節に於て詩人はヱホバの事を宣べしが、十四節に於てヱホバは詩人の事を宣べ給ふ。我等も神の事を證する時我等の事に關する神の約束を聞く事を得るなり。
▲十四〜十六節に神を愛し又神を信ずる者に與へらるゝ七の恩惠約束せらる。
『彼その愛をわれにそゝげるがゆゑに』──即ち神を愛するが故に
『かれわが名をしるがゆゑに』──即ち神を信ずるが故に
一、援助(十四始)──『彼その愛をわれにそゝげるがゆゑに我これを助けん』
二、天の處の生涯(十四終)──『かれわが名をしるがゆゑに我これを高處におかん』(エペソ二・六參照)
三、祈禱の答(十五始)──『かれ我をよばゞ我こたへん』
四、慰藉(十五中程)──『我その苦難のときに偕にをりて之をたすけ』
五、神の譽(十五終)──『之をあがめん』(黙示録三・五終參照)
六、豐なる生命(十六始)──『われ長壽をもてかれを足はしめ』
七、啓示(十六終)──『且わが救をしめさん』
神を愛し又神を知りて之に信賴する者には以上の七の惠約束せらる。
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