詩篇の靈的思想　第百十九篇

　詩篇中最も長き本篇は神の聖言みことばに就ついて歌へる詩なり。本篇中に神の眞理しんりは凡すべて記さる。主イエスの救すくひの凡すべての方面は本篇中に顯あらはる。
　本篇はヘブル原語にてはヘブル語のいろはアルファベット順に排列され、初はじめの八節は各節共アルファベットの第一音なる「アレフ」に始まり、次の八節は各節共其その第二音なる「ベテ」にて始まり、其その次の八節は各節共第三音「ギメル」にて始まり、以下斯かくの如く八節宛づゝ其その順序を追ふ。而しかして之これによりて本篇は自おのづかから區分せらる。今各區分の大意を示さん。
　アレフ　　潔きよめられたる幸福さいはひ
　ベテ　　　聖言みことばの潔きよむる能力ちから
　ギメル　　潔きよき心の欲求したひ
　ダレテ　　廣き心の叫さけび
　ヘ　　　　忠信なる願ねがひ
▲ワウ　　　惠めぐみの結果
　此この部分に二つの祈禱いのりあり。
一、憐憫あはれみと拯救すくひを祈る（四十一）──『ヱホバよ聖言みことばにしたがひてなんぢの憐憫あはれみなんぢの拯救すくひを我にのぞませたまへ』
二、他たの人々を敎へ得ん事を祈る（四十三）──『又わが口より眞理まことのことばをことごとく除き給ふなかれ』
▲此この祈禱いのりの結果は
一、反對者に答ふるを得う（四十二始はじめ）──『さらば我われを謗そしるものに答ふることをえん』
二、服從（四十四）──『われたえずいや永久とほながになんぢの法のりをまもらん』
三、自由（四十五）──『われなんぢの訓諭さとしをもとめたるにより障さはりなくしてあゆまん』
四、證あかしする大膽（四十六）──『われまた王たちの前になんぢの證詞あかしをかたりて恥はづることあらじ』
五、神の言ことばを喜ぶ（四十七）──『我わが愛するなんぢの誡命いましめをもて己おのれをたのしましめん』
六、聖言みことばを玩味默想す（四十八）──『われ手をわがあいする汝なんぢのいましめに擧げなんぢの律法おきてをふかく思はん』
▲ザイン　　苦難くるしみの中うちの望のぞみ
　此この部分に於おいて聖言みことばによりて得る各樣さまざまの惠めぐみを示す。
一、望のぞみ（四十九）──『ねがはくは汝なんぢのしもべに宣のたまひたる聖言みことばをおもひいだしたまへ汝なんぢわれに之これをのぞましめ給へり』
二、生命いのち（五十始はじめ）──『なんぢの聖言みことばはわれを活いかしゝがゆゑに』
三、慰藉なぐさめ（五十終をはり）──『今もなほわが艱難なやみのときの安慰なぐさめなり』（五十二參照）
四、勝利（五十一）──『高ぶる者おほいに我をあざわらへりされど我なんぢの法のりをはなれざりき』
五、悦樂よろこび（五十四）──『なんぢの律法おきてはわが旅の家にてわが歌となれり』
▲ヘテ　　　信者の心靈上の經驗
一、祈禱いのり（五十八）──『われ心をつくして汝なんぢのめぐみを請求こひもとめたりねがはくは聖言みことばにしたがひて我をあはれみたまへ』
二、悔改くいあらため（五十九）──『我わがすべての途みちをおもひ足をかへしてなんぢの證詞あかしにむけたり』
三、服從（六十）──『我なんぢの誡命いましめをまもるに速すみやけくしてたゆたはざりき』
四、迫害の中うちに於おける勝利（六十一）──『惡あしきものの繩われに纏まとひたれども我なんぢの法のりをわすれざりき』
五、感謝（六十二）──『我なんぢのたゞしき審判さばきのゆゑに夜半よはにおきてなんぢに感謝せん』
六、聖徒の交際まじはり（六十三）──『われは汝なんぢをおそるゝ者またなんぢの訓諭さとしをまもるものの侶ともなり』
七、惠めぐみの經驗（六十四始はじめ）──『ヱホバよ汝なんぢのあはれみは地にみちたり』
▲テテ　　　神の取扱とりあつかひ
　ヨーデ　　被造者つくられしものの造物主つくりぬしに對する叫さけび
　カフ　　　苦くるしみの時の望のぞみ
　ラメテ　　神の聖言みことばを守る
　メム　　　靜しづかに考ふる事の利益りえき
　ヌン　　　光なる聖言みことば
　サメク　　人の考かんがへと神の法のりとの比較
　アイン　　虐しへたげられし者の訴うったへ
　ペ　　　　活いける神を慕ふ
　ツァデー　神の義
　コフ　　　熱心なる叫さけび
　レシ　　　神の眷顧かへりみを願ふ
▲シン　　　聖言みことばの結果
一、畏おそれ（百六十一終をはり）──『わが心はたゞ汝なんぢのみことばを畏おそる』
二、歡喜よろこび（百六十二）──『われ人のおほいなる掠物えものをえたるごとくに汝なんぢのみことばをよろこぶ』
三、愛（百六十三）──『われ虛僞いつはりをにくみ之これをいみきらへども汝なんぢののりを愛す』
四、切なる讃美（百六十四）──『われ汝なんぢのたゞしき審判さばきのゆゑをもて一日ひとひに七次なゝたびなんぢを讃稱ほめたゝふ』
五、大おほいなる平安やすき（百六十五）──『なんぢの法のりをあいするものには大おほいなる平安やすきありかれらには躓礙つまづきをあたふる者なし』
六、望のぞみ（百六十六）──『ヱホバよ我なんぢの救すくひをのぞみ汝なんぢのいましめをおこなへり』
▲タウ　　　聖言みことばによりて樣々の惠めぐみを得う。

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第百十九篇 題目 神の聖言みことば

第百十九篇　　題目　神の聖言みことば