雅 歌
第 五 章
- わが妹わがはなよめよ
我はわが園にいり
わが沒藥と薰物とを採り
わが蜜房と蜜とを食ひ
わが酒とわが乳とを飮り
わが伴侶等よ
請ふ食へ
わが愛する人々よ
請ふ飮あけよ
- われは睡りたれどもわが心は醒ゐたり
時にわが愛する者の聲あり即はち門をたゝきていふ
わが妹わが佳耦
わが鴿
わが完きものよ
われのために開け
わが首には露滿ち
わが髮の毛には夜の點滴みてりと
- われすでにわが衣服を脫り
いかでまた着るべき
已にわが足をあらへり
いかでまた汚すべき
- わが愛する者戶の穴より手をさしいれしかばわが心かれのためにうごきたり
- やがて起いでゝわが愛する者の爲に開かんとせしとき沒藥わが手より沒藥の汁わが指よりながれて關木の把柄のうへにしたゝれり
- 我わが愛する者の爲に開きしにわが愛する者は已に退き去ぬ
さきにその物いひし時はわが心さわぎたり
我かれをたづねたれども遇ず
呼たれども答應なかりき
- 邑をまはりありく夜巡者等われを見てうちて傷つけ
石垣をまもる者らはわが上衣をはぎとれり
- ヱルサレムの女子等よ
我なんぢらにかたく請ふ もしわが愛する者にあはゞ汝ら何とこれにつぐべきや
我愛によりて疾わづらふと告よ
- なんぢの愛する者は別の人の愛する者に何の勝れるところありや
婦女の中のいと美はしき者よ
なんぢが愛する者は別の人の愛する者に何の勝れるところありて斯われらに固く請ふや
- わが愛する者は白くかつ紅にして萬人の上に超ゆ
- その頭は純金のごとく
その髮はふさやかにして黑きこと烏のごとし
- その目は谷川の水のほとりにをる鴿のごとく
乳にて洗はれて美はしく嵌れり
- その頰は馨しき花の床のごとく
香草の壇のごとし
その唇は百合花のごとくにして沒藥の汁をしたゝらす
- その手はきばみたる碧玉を嵌し黃金の釧のごとく
其躰は靑玉をもておほひたる象牙の彫刻物のごとし
- その脛は蠟石の柱を黃金の臺にたてたるがごとく
その相貎はレバノンのごとくその優れたるさまは香柏のごとし
- その口ははなはだ甘く誠に彼には一つだにうつくしからぬ所なし
ヱルサレムの女子等よ
これぞわが愛する者
これぞわが伴侶なる
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