第 四 十 一 章



  1. なんぢはりをもてわにつりいだすことを得んや、その舌を糸にひきかくることを得んや
  2. なんぢあしなはをその鼻に通し、またはりをそのあごつきとほし得んや
  3. これあにしきりになんぢに願ふことをせんや、やはらかになんぢに言談ものいはんや
  4. あになんぢと契約をなさんや、なんぢこれをとりながしもべしおくを得んや
  5. なんぢ鳥とたはむるゝが如くこれとたはむれ、またなんぢ婦女等をんなどものためにこれを繫ぎおくを得んや
  6. また漁夫すなどり社會なかまこれを商貨あきなひものして商賣人あきうど中間なかわかたんや
  7. なんぢ漁叉もりをもてその皮に滿みたし、魚矛うをほこをもてそのかしらつきとほし得んや
  8. 手をこれにくだし見よ、さらばその戰鬪たゝかひをおぼへて再びこれをなさざるべし
  9. よ そののぞみむなこれを見てすらたふるゝにあらずや
  10. 何人なにびとこれげきする勇氣あるなし、さらたれかわが前にたちうる者あらんや
  11. たれか先にわれに與へしところありてわれをしてこれむくいしめんとする者あらん、普天ふてんしたにある者はことごとく我有わがものなり
  12. われまた彼者かのもの肢体したいとそのいちじるしき力とそのうるはしき身の構造つくりとをいはではおか
  13. たれかその外甲うはよろひはがん、たれかその雙齶ふたあごあひだいら
  14. たれかそのかほの戶をひらきえんや その周圍まはりの齒はおそるべし
  15. その並列ならべ鱗甲うろここれが誇るところ、その相闔あひとぢたるさまは堅く封じたるがごとく
  16. これかれとあひつゞきて風もその中間あひだにいるべからず
  17. 一々いちいちあひ連なり堅くつきて離すことを得ず
  18. くさめすればすなはち光はっす、その目は曙光あけぼの眼瞼まぶた(をひらく)に似たり
  19. その口よりは炬火たいまついで火花はっ
  20. その鼻のあなよりはけぶりいできたりて宛然あだかもあしく釜のごとし
  21. その氣息いきは炭火をおこ火燄ほのほその口より
  22. 氣力ちからそのくびに宿る おそるゝ者その前に彷徨をどりまよふ
  23. その肉のひらは密に相連あひつらなり、堅く身につきて動かすべからず
  24. そのしん堅硬かたきこと石のごとく、その堅硬かたきこと下磨したうすのごとし
  25. その身をおこす時は勇士も戰慄をのゝき、恐怖おそれによりて狼狽あはてまどふ
  26. つるぎをもてこれうつともきかず、やりも矢も漁叉もりも用ふるところ
  27. これくろがねを見ること稿わらのごとくし あかゞねを見ること朽木くちきのごとくす
  28. 弓箭ゆみやもこれをにげしむることあたはず、投石機いしなげの石も稿屑わらくづ見做みなさ
  29. 棒もこれには稿屑わらくづと見ゆ、やりひらめくをこれは笑ふ
  30. その下腹したばらには瓦礫かはら碎片くだけを連ね、どろの上に麥打車むぎうちぐるまを引く
  31. ふちをしてかなへのごとくわきかへらしめ、海をして香油にほひあぶらの釜のごとくならしめ
  32. おのあとに光る道をのこせばふち白髮しらがをいたゞけるかとうたがはる
  33. 地の上にはこれと並ぶ者なし、これ恐怖おそれなき身に造られたり
  34. これ一切すべて高大かうだいなる者を輕視かろんず、まこともろもろの誇り高ぶる者の王たるなり


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