新約全書使徒パウロ ヘブル人びとに贈おくれる書ふみ

第 三 章

1. 是故このゆゑに同おなじく天の召めしを蒙かうむりし潔きよき兄弟よ
2. モーセが神の全家せんかに忠義をせし如く己おのれを立たてし者に忠義なる 我儕われらが信ずる所の使徒たる祭司の長をさたるイエスを深く思おもふべし
3. そは家を建つくりし者の家より過まさりて榮ほまれあるが如く彼もモーセよりは過まさりて榮ほまれを受うくべき者とせられたり
4. 凡およそ家は之これを建つくれる者あり 萬物ばんもつを造れる者は神なり
5. 夫それモーセは將來のちに言傳いひつたへられんとする事の證あかしをせんが爲ために僕人つかはれびとの如く神の全家ぜんかに於おいて忠義をなし
6. キリストは子たる者の如く神の家を宰つかさどれり 我儕われらもし信仰と望のぞみの喜よろこびとを終をはりまで堅かたく保たもたば我儕われらは其その家なり
7. 是故このゆゑに聖靈の云いへる如くせよ 爾曹なんぢらもし今日けふ其その聲を聽きかば野のに在ありて主しゅを試みたる日 その怒いかりを惹ひきし時の如く
8. 爾曹なんぢら心を剛愎かたくなにする勿なかれ
9. 其處そのところに於おいて爾曹なんぢらの列祖せんぞ吾われを試み我われをためし又四十年しじふねんの間あひだわが作爲わざを視みたり
10. 是故このゆゑに我われその代よの人を怒いかりて彼等は常に心惑まどへりと曰いへり 然されど我わが道みちを知しらざりき
11. 故ゆゑに我われ憤いきどほりて彼等は我わが安息やすみに入いるべからずと誓ちかひたり
12. 兄弟よ 爾曹なんぢらが中うちに不信仰なる惡あしき心を懷いだきて活神いけるかみの前より離れ墮おつること莫なからんやう愼つゝしむべし
13. 爾曹なんぢらのうち誰一人たれひとり罪の誘惑あざむきに由よりて剛愎かたくなにならざるやう今日けふと稱となふるうちに日々互たがひに相あひ勸すゝめよ
14. そは我儕われらもし始はじめの信仰を終をはりまで堅かたく持たもたばキリストに與くみする者とならん
15. 夫それいへることあり 若もし今日けふその聲を聽きかば怒いかりを惹ひきし時のごとく爾曹なんぢらの心を剛愎かたくなにする勿なかれ
16. 聞きゝてなほ怒いかりを惹ひきし者は誰たれぞや モーセに從ひてエジプトより出いでたる衆すべての者に非あらずや
17. 神は四十年しじふねんのあひだ誰たれに向むかひて怒いかりしや 罪を犯して其その屍しかばねを野のに仆たふしゝ者どもに怒いかれるならず乎や
18. 又その安息やすみに入いるべからずと誰たれに向むかひて誓ちかひしや 信仰せざりし者等ものどもに誓ちかへるならず乎や
19. 是これに由よりて觀みれば彼等が入いることを得ざりしは不信に由よりてなり

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