約 百 記
第 十 四 章
- 婦の產む人はその日少なくして艱難多し
- その來ること花のごとくにして散り、其馳ること影のごとくにして止まらず
- なんぢ是のごとき者に汝の目を啓きたまふや、汝われを汝の前にひきて審判したまふや
- 誰か淸き物を汚れたる物の中より出し得る者あらん、一人も無し
- その日既に定まり、その月の數なんぢに由り、汝これが區域を立て越ざらしめたまふなれば
- 是に目を離して安息を得させ、之をして傭人のその日を樂しむがごとくならしめたまへ
- それ木には望あり、假令砍るゝとも復茅を出してその枝絕ず
- たとひ其根地の中に老い、幹土に枯るとも
- 水の潤霑にあへば即はち芽をふき枝を出して若樹に異ならず
- 然ど人は死れば消うす、人氣絕なば安に在んや
- 水は海に渴き、河は涸てかわく
- 是のごとく人も寢臥てまた興ず、天の盡るまで目覺ず睡眠を醒さゞるなり
- 願はくは汝われを陰府に藏し、汝の震怒の息むまで我を掩ひ、我ために期を定め而して我を念ひたまへ
- 人もし死ばまた生んや 我はわが征戰の諸日の間望みをりて我が變更の來るを待ん
- なんぢ我を呼たまはん 而して我こたへん、汝かならず汝の手の作を顧みたまはん
- 今なんぢは我の歩履を數へたまふ、我罪を汝うかゞひたまはざらんや
- わが愆は凡て囊の中に封じてあり 汝わが罪を縫こめたまふ
- それ山も倒れて終に崩れ 巖石も移りてその處を離る
- 水は石を鑿ち浪は地の塵を押流す、汝は人の望を絕たまふ
- なんぢは彼を永く攻なやまして去ゆかしめ、彼の面容を變らせて逐やりたまふ
- その子尊貴なるとも彼はこれを知ず、卑賤なるもまた之を曉らざるなり
- 只己みづからその肉に痛苦を覺え己みづからその心に哀く而已
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