第三篇 題目 我を救ひ給へ (七節參照)
ダビデその子アブサロムを避しときのうた
- ヱホバよ 我にあたする者のいかに蔓延れるや 我にさからひて起りたつもの多し
- わが靈魂をあげつらひて かれは神にすくはるゝことなしといふ者ぞおほき セラ
- されどヱホバよ なんぢは我をかこめる盾 わが榮 わが首をもたげ給ふものなり
- われ聲をあげてヱホバによばはればその聖山より我にこたへたまふ セラ
- われ臥していね また目さめたり ヱホバわれを支へたまへばなり
- われをかこみて立かまへたる千萬の人をも我はおそれじ
- ヱホバよ ねがはくは起たまへ わが神よわれを救ひたまへ なんぢ曩にわがすべての仇の頬骨をうち 惡きものの齒ををりたまへり
- 救はヱホバにあり ねがはくは恩惠なんぢの民のうへに在んことを セラ
本篇より以下六篇迄は朝夕夜の一連の詩也。
三篇──朝の詩(其五節參照)
四篇──夕の詩(其八節參照)
五篇──夜の詩(其三節參照)
六篇──夜半の詩(其六節參照)
▲此第三篇に『セラ』といふ語三度記さる。これは詩篇の中に度々記さるゝ語にて、大切なる語なり。恰かも新約に於て主が『まことに誠に汝等に告ぐ』と宣ひしが如く、特に其前にある言に注意を促す爲にて、『セラ』とは止れよの意也。即ち止って考へよ也。本篇のセラは以下の如し。
二節──サタンの力を深く考へざる可らず
四節──神が祈禱に答へ給ふ事を考へよ
八節──其祈禱を續いて心にて捧ぐべし
尚序に四十六篇の中にある三つのセラを見よ。本篇の順序に似たり。
四十六・三──罪の恐ろしき結果とサタンの恐ろしき力を考へよ
同 ・七──神を信ぜよ
同 ・十一──自己の平安安全なる事を感謝せよ
▲本篇の分解
(一、二)試練と困難
(三〜六)神に對する信賴
(七、八)勝利の確信
詩篇の中に度々此順序にて記さるゝを見る。我等も此順序に從って祈るべし。本篇は全體を通じて祈禱にて、其主意は七節にある『われを救ひたまへ』也。
▲尚詳しく本篇を見るに
一節 に仇あり困難生じ
二節 にて疑惑起る。然れど
三、四節 にある如く神に依賴む故、其信仰の結果として
五節 に平安と神の保護
六節 に大膽
七節 に希望
八節 に恩惠──を得る也。初めに困難と疑惑ありしが、最後に眞の平安を經驗す。是信仰より起る當然の結果也。
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