第五篇　　題目　我を導き給へ （八）

簫ふえにあはせて伶長うたのかみにうたはしめたるダビデのうた

1. ヱホバよねがはくは我わがことばに耳をかたむけ わが思おもひにみこゝろを注とめたまへ
2. わが王よわが神よ わが號呼さけびのこゑをきゝたまへ われ汝なんぢにいのればなり
3. ヱホバよ朝あしたになんぢわが聲をきゝたまはん 我われあしたになんぢの爲ためにそなへして俟望まちのぞむべし
4. なんぢは惡あしきことをよろこびたまふ神にあらず 惡人あしきひとはなんぢの賓客まらうどたるを得ざるなり
5. たかぶる者はなんぢの目前めのまへにたつをえず なんぢはすべて邪曲よこしまをおこなふものを憎みたまふ
6. なんぢは虛偽いつはりをいふ者をほろぼしたまふ 血をながすものと詭計たばかりをなすものとはヱホバ憎みたまふなり
7. 然されどわれは豐かなる仁慈みいつくしみによりてなんぢの家にいらん われ汝なんぢをおそれつゝ聖宮きよきみやにむかひて拜をがまん
8. ヱホバよ願ねがはくはわが仇あたのゆゑになんぢの義をもて我われをみちびき なんぢの途みちをわが前まへになほくしたまへ
9. かれらの口には眞實まことなく その衷うちはよこしま その喉のどはあばける墓 その舌はへつらひをいへばなり
10. 神よねがはくはかれらを刑つみなひ その謀略はかりごとによりてみづから仆たふれしめ その愆とがのおほきによりて之これをおひいだしたまへ かれらは汝なんぢにそむきたればなり
11. されど凡すべてなんぢに依賴よりたのむ者をよろこばせ永遠とこしへによろこびよばはらせたまへ なんぢ斯かゝる人をまもりたまふなり 名みなをいつくしむ者にもなんぢによりて歡喜よろこびをえしめたまへ
12. ヱホバよなんぢは義者たゞしきものにさいはひし盾たてのごとく恩惠めぐみをもて之これをかこみたまはん

▲本篇の分解
　（一〜三）望のぞみと信仰──神が祈禱いのりに答へ給ふ事を望み又信ず
　（四〜六）神が惡を憎み給ふ事
　（七）神に近づく決心
　（八）神の導みちびきを求む
　（十一、十二）其その結果
　（九、十）は仇あだの狀態と其その審判さばきを祈る祈禱いのりを挿入せる也なり
▲一、二節中にある以下の三つの言ことばは皆祈禱いのりを指す。
　『我わがことば』──言ことばの祈禱いのり也なり。唯たゞ漠然と惠み給へといふに非あらずして、或あるひは潔きよめ給へとか或あるひは斯かゝる惠めぐみを與へ給へとか、己おのが願ねがひを明白あきらかに言表いひあらはして祈るべし。
　『わが思おもひ』──祈禱いのりの時に於おける心中しんちゅうの悶もだえ又嘆き也なり。言表いひあらはし難き悶もだえを抱き、又深く自ら省みて祈る也なり。
　『わが號呼さけび』──熱烈なる祈禱いのり也なり。斯かゝる祈禱いのりは度々今斯かくかくし給へと祈る。
▲聖書中、格別に詩篇中に朝早く祈る事記さる（五・三、五十七・八、五十九・十六、八十八・十三、百十九・百四十七、百四十三・八）。

| 目次 | 緖言 | 總目次 |