でん  だう    しょ

第 六 章



  1. われるに日のした一件ひとつうれへあり これは人のうちつねなる者なり
  2. すなはち神とみたからたふときを人にあたへてその心に慕ふ者を一件ひとつもこれにかくることなからしめたまひながらも 神またその人にこれくらふことを得しめたまはずして他人のこれをくらふことあり これくうなり あしやまひなり
  3. 假令たとひひと百人の子をまうけまた長壽いのちながくしてその年齡よはひの日多からんももしその心景福さいはひに滿足せざるか又ははうむらるゝことを得ざるあればわれいふ 流產の子はその人にまさるなり
  4. それ流產の子はそのきたることむなしくして黑暗くらやみうちさりゆきその名は黑暗くらやみうちにかくるゝなり
  5. これは日を見ることなく物を知ることなければかれよりも安泰やすらかなり
  6. 人の壽命いのちは千年に倍するとも福祉さいはひかうむれるにはあらず 皆一所ひとつところくにあらずや
  7. 人の勞苦ほねをりは皆その口のためなり その心はなほもあかざるところ
  8. 賢者かしこきものなんぞ愚者おろかなるものまさるところあらんや また世人よのひとの前に歩行あゆむことをしるところの貧者まづしきものなにまさるところあらんや
  9. 目にる物事は心のさまよひ歩くにまさるなり これまたくうにして風を捕ふるがごとし
  10. かつありし者はひさしさきにすでにその名をつけられたり すなはこれは人なりと知る されこれはかの自己おのれよりも力つよき者と爭ふことを得ざるなり
  11. 衆多おほく言論ことばありて虛浮むなしき事を增す されど人になにえきあらんや
  12. 人はその虛空むなし生命いのちの日を影のごとくに送るなり たれかこの世において如何いかなる事か人のためにき者なるやをしらたれかその身ののちに日のしたにあらんところの事を人につげうる者あらんや


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