第六　甦りの力による生涯

　この新婦は甦よみがえりたもうた主を求めて、もはやこれを得ました。そのためにもはや幸福を得、また甦よみがえりの力に与あずかることを得ました。もはや狭い暗い室いえを出てペンテコステの空気を吸うことを得ました。また甦よみがえりたまいし主と共に天の処ところに坐することを得ました。そうですから今、六節からこの章の終わりまでに、甦よみがえりに与あずかる生涯とはどういうものであるかを示します。

六節『この沒藥もつやく乳香にうかうなど商人あきうどのもろもろの薫物かをりものをもて身をかをらせ 煙の柱のごとくして荒野あれのより來きたる者は誰たれぞや』

　今この人はこういう者となりました。すなわち神のご臨在を表あらわして生涯を暮らす事を得ます。イスラエル人びとが荒野あれのを旅行しましたときに、その真中に天幕があり、その天幕の上に神の雲の柱が立っておりまして、それによりて神が始終その中に宿っていたもうことが解わかりました。今この新婦はそのように『煙の柱のごとく』に参ります。神は昔イスラエル人を新婦として、エジプトより携え上のぼりたまいましたが、今ここでその新婦を罪というエジプトより携え出いだし、この世の荒野あれのにおいてこれを伴い、そのご臨在をもって共に行きたまいます。甦よみがえりの主を得ました者は、このように荒野あれのを旅行します。またその人は『もろもろの薫物かをりものをもて身をかをらせ』ております。すなわち恩恵めぐみに満たされ、善い感化を人に与えます。

　またこういう人は自分の力で旅をいたしません。甦よみがえりの力にて、すなわち甦よみがえりし主イエスの御力みちからに凭もたれて生涯を暮らします。それは七節をご覧なさい。

七節『視みよ こはソロモンの乗輿のりものにして』

　すなわちソロモンの乗り物に乗って参ります。自分の力で行きません。私共がもはやキリストの甦よみがえりに与あずかりましたならば、そのようにキリストの乗り物に乗って、生涯を暮らす事を得ます。疲れることなく、また倦うむこともなく、安らかに息やすんで生涯を暮らします。今までは自分の力で、すなわち徒歩で生涯を送りました。けれども今もはや聖霊の力に頼りましたから、安らかに乗り物に乗って生涯を暮らします。九節を見ますと、このソロモンの乗り物はレバノンの木をもって作った物でありました。レバノンの木、すなわち香柏こうはくは朽ちざるものでありますから、いつでも甦よみがえりを指します。そうですからこの乗り物は主の甦よみがえりを指す雛型であります。これに乗って生涯を暮らします。

　またその生涯は神の力に護まもられる生涯であります。

『勇士ますらを六十人その周圍まはりにあり イスラエルの勇士ますらをなり』
八節『みな刀劍つるぎを執り 戰鬪たゝかひを善よくす 各人おのおの腰に刀劍つるぎを帶おびて夜よるの警誡いましめに備ふ』

　そうですから己おのれの力をもって自分を護まもらなければならぬ訳わけがありません。神の力に護まもられて甦よみがへりの生涯を暮らします。詩篇九十一篇十一節（『そは至上者いとたかきものなんぢのためにその使者輩つかひたちにおほせて汝なんぢがあゆむもろもろの道になんぢを守らせ給へばなり』）。またはヘブル書一章十四節（『凡すべて天の使者つかひは救すくひを嗣つがんとする者に事つかへんために遣つかはさるゝ靈れいに非あらずや』）のように天の使いが救いの嗣者ししゃを護まもりりますから、ペテロ前書一章五節のとおりに『神の能ちからに護まもられ』て、その嗣業しぎょうに向かって旅することを得ます。エリシャはこういう守護を経験しました。（列王紀略下六章十六節『エリシヤ答へけるは 懼おそるるなかれ 我儕われらとゝもにある者は彼等とゝもにある者よりも多しと』）。そうですから心の中うちに心配がなくただ安心のみありました。神はそのように、またイザヤ書二十七章三節にあるように（『われヱホバこれを護まもり をりをり水をそゝぎ 夜よも晝ひるもまもりて害そこなふものあらざらしめん』）断えず私共を護まもりたまいます。

十節『その柱は白銀しろかね』

　出エジプト記三十章十六節にある贖あがないの金かねは銀でありましたから、この銀は贖あがないを指すと思います。すなわち主の贖あがないのためにこの乗輿のりものは強うございます。

『その欄杆らんかんは黃金こがね』

　黄金こがねは神のご慈愛の雛型であります。

『その座は紫色むらさきにて作り その内部なかにはイスラエルの女子等をうなごらが愛をもて繡ぬひたる物を張はりつく』

　紫色は王の色であります。すなわちこれは王たる有様の雛型であります。私共は主と共に天の処ところにて王となりましたから、紫色の座布団を用うることを得ます。神はこのように私共を主の甦よみがえりの力に与あずからせとうございます。これは私共の栄光ばかりでなく、十一節を見ますと、これはまた主の栄光であります。

十一節『シオンの女子等をうなごらよ 出いできたりてソロモン王を見よ かれは婚姻の日 心の喜よろこべる日にその母の己おのれにかうぶらしゝ冠冕かんむりを戴いただけり』

　そうですからあなたが主と共にその乗輿のりものに乗りますなれば、それは主の栄光であります。主はそれによって新しく冠を戴きたまいます。イザヤ書六十二章三節を見ますれば、主の属ものとなった信者は主の冠であります（『また汝なんぢはうるはしき冠のごとくヱホバの手にあり王の冕かんむりのごとくなんぢの神のたなごゝろにあらん』）。おお兄弟姉妹よ、あなたが主の甦よみがえりに与あずかることを得ますならば主はそのために新しき冠を得、新しき栄え、新しき喜びを得たまいます。これは婚約の日（日本訳の婚姻の日とあるは英改訳には婚約の日（in the day of his espousals）とあります）でありましたから、新しく心の中に幸福を経験したまいます。ルカ伝十五章の放蕩息子が帰って参りました時に、その息子ももちろん喜悦よろこびを得ましたでしょうが、その事は聖書に記されてありませんが、父は大いに喜んだことが記してあります。そのように、あなたが主の甦よみがえりの能力ちからに与あずかりますならばそのために主は新しき冠を戴き、そのために喜びたまいます。おお皆様、主はあなたがたによりて冠を得たまいとうございます。

　あなたは甦よみがえりし主しゅに遇あうことを得ましたか。主は今日或る兄弟姉妹に『起たちていできたれ』（二章十節）と言いたまいます。おおどうか『心の愛する者』の声を聞いて、ただいま不信仰と自分の狭い考えを捨て、小さい己おのれというものを捨てて聖霊の春の天気に出いでなさい。そうしますれば甦よみがえりたもうた主しゅに遇あう事を得、またこの主と一つになり、いつまでも主の甦よみがえりに与あずかり、主と共に天の処ところに座す事を得ます。断えず主の御力みちからに携えられて生涯を送る事を得ます。

　列王紀略下十章十五節をご覧なさい。エヒウがヨナダブに遇あいました時に『汝なんぢの心はわが心の汝なんぢの心と同一ひとつなるがごとくに眞實しんじつなるやと言いひけるに ヨナダブ答へて眞實しんじつなりと言いひたれば 然さらば汝なんぢの手を我われに伸のべよと言ひ その手を伸のべければ彼を挽ひきて己おのれの車に登らしめ』たとあります。主イエスはそのごとく私共の心を探りたまいまして、真実があるのをご覧なさいますれば、私共の手を引きたもうてご自分の車に乗せたまいます。どうぞただ今それを思うて、祈禱いのりの中に信仰の手を伸べて主しゅに接し、主の甦よみがえりの車に乗ることを得なさるようにお勧めいたします。

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