第 壹 回 (明治卅一年二月廿八日午后六時卅分開會)
信 者 の 悔 改
バックストン敎師講演
爾ラオデキヤの敎會の使者に書贈るべし アーメンたる者 忠信なる眞實の證者 神の造化の始なる者 かくの如く言と 曰く われ爾が冷かにも有ず熱も有ざることを爾の行爲に由て知り 我なんぢが冷かなるか或は熱からんことを願ふ 爾すでに温然して冷かにもあらず熱くも有ず 是故に我爾を我口より吐出さんとす なんぢ自ら我は富かつ豐になり乏き處なしと稱て實は惱るもの憐むべき者また貧く瞽ひ裸體なるを知ざれば われ爾に勸む なんぢ富をなさんために我より火にて燬たる金を買へ また己が裸體の恥の露れざらん爲に白衣を買て纏へ 又見ことを得ん爲に目藥を買て目にぬれ 凡て我愛する者は我これを責め之を懲す 是故に爾勵て悔改めよ (默示錄三章十四節より十九節)
今晩神はこの集会の真中に立ちて直接に私共にむかって恩深き聖言を語りたまいます。されば私共は何よりまず心を静めてすべての穢れとまたほかの思いを棄て神の聖言を聞くことが大切でございます。
おお兄弟姉妹よ、私共は今晩神の恩を求めてこのところに集まりました。即ち私共が今晩このところに集まりし目的は決して人間の話を聞くためでなく、また盛んなる集会を見物するためでもありません。ただ神に対面して直接に神の聖声を聞かんがためでございます。されば今晩神もし語りたまわざればこの集会は無益です……実に無益です。今晩もしこの集会においてただ人間の声ばかり響きますなればそれは駄目でございます。おおどうぞ心を空しくしてただ神のみ待ち望め。今晩神もしこの集会において啞者となりたもうことあれば(詩二十八・一)、私共は恩も潔めも受くることが出来ません。尤も幾分か私共の感情が動くことがあるかも知れぬ、また幾分か聖書の知識を得るかも知れぬ、けれども真実に活ける恩を頂戴することはできません。されば私共の今晩の望みは神の聖声を聞くことです。おおどうぞ心を静めて今神の聖声を聞けよ。ただ神のみ待ち望め。
昔イスラエルの人々がシナイ山の麓において神の聖声を聞きたるときは実に厳粛でございました。多くの人々が一処に集まりて神の聖声を聞きましたが、それは実に厳かなる集会でございました。彼らはその集会において雷の中に……電の中に……煙の中に……地震の中に、また高き喇叭の響きの中に神の聖声を聞きました。今晩神はそういう表面の証をもってこのところに顕れたまいません。けれどもこの集会はそれと同じくごくごく厳粛なる集会でございます。おおどうぞ神の聖声を聞けよ。聞きて自らの有様を知れよ。
私は先刻、黙示録三章十四節以下を読みました。今晩この集会の中において神よりこの聖言を受くる者は誰ですか。このラオデキヤの信者たちは自分自ら誠に善き信者である、立派なる神の僕であると考えておりました。しかるに神はその信者たちに向いて何と仰せたまいましたか。どうぞ黙示録三章十四、五節をご覧なさい。
爾ラオデキヤの敎會の使者に書贈るべし アメンたる者 忠信なる眞實の證者 神の造化の始なる者かくの如く言と 曰 われ爾が冷かにも有ず熱も有ざることを爾の行爲に由て知り 我なんぢが冷かなるか或は熱からん事を願ふ
おお今晩この聖言は誰のためでございますか。この集会の中にはこういう信者はありませんか。温然き者はございませんか。おおどうぞ御銘々に心の底をお捜しなされ、自分の考えによらずして、聖なる……聖なる……聖なる神の聖前において自分の心を反省よ、されば神は御銘々さまにその自分の有様を教えたまいます。『われ爾が冷かにも有ず熱も有ざることを……』おお今晩このところに集まりたる御銘々さまはこの熱さがありますか。あなたは熱心なる信者ということができますか。あなたは果して聖霊の熱さに満たされておりますか。なるほどあなたは喜んでこういう集会に出席します。喜んで話を聞き、また聖書の講義を聞きます。けれども滅亡に往く罪人を神に導く能力があるか、またその熱心がありますか。おおあなたは今晩喜んでこの集会に参りました。けれどもあなたの周囲にあるあなたの家族、またあなたの朋友はいま滅亡に往きつつおりはいたしませんか。若し今晩あなたの周囲にそういう者がございまして、あなたは彼らに熱き同情がありませんなれば、あなたは実に温然き信者であります。おおどうそ自らを神の前に卑くして実際の有様を反省よ。またあなたは毎朝毎晩祈禱をなさるでございましょう。けれどもあなたの心の中に断えず祈禱の念がありますか。またあなたの献ぐる祈禱は果して滅亡る霊魂のために熱き同情をもって祈っておりますか。或いはただ自分のためばかりではありませんか。おおどうぞいま神の聖前に出でて自らを顧みよ。またあなたは信者となりましてから表面に顕るる罪を犯すことのないだけの熱さはありましょう。しかし心の有様はいかがですか。真実に神を愛する愛があるか、真実に主に対する熱心があるか、あなたは果して心の中からこの世を愛する愛を全く棄てましたか。もしあなたの心の中に真実に神を愛する愛なく、主に対する熱心がなく、また幾分にてもこの世を愛する愛があれば、あなたは決して熱き信者ということは出来ません。ただ温然信者であります。おお温然信者よ、あなたは神の愛を感じませんか。神があなたを贖いたまいしは天国の世嗣たらしめんがためではありませんか。あなたはこれまで度々神の大いなる光を見、また神より大いなる恩を受けましたでございましょう。しかるにあなたは今なお温然き信者ですか。またあなたはこれまでしばしば神に祈り、その応答を受けましたでしょう。しかるに今なお温然き信者ですか。おお温然き信者よ、どうぞ今涙を流してこれまでの有様を悔いよ。しからざればあなたは実に危ういことです。どうぞ心を潜めて十六節をご覧なさい。
爾すでに溫然して冷かにも有ず熱くも有ず 是故に我なんぢを我が口より吐出さんとす
我なんぢをわが口より吐出さんとす。おお実に温然き信者の有様は危ういことではありませんか。しかるに或る信者はこのことをあまり心に止めませんがこれは実に危ういです。却って冷ややかなる方が宜しいかも知れません。今まで少しも神の愛を聞かない者が却って福かも知れません。おお温然き信者よ、今晩あなたは実に実に危うい立場に立っておるではありませんか。神はあなたに向ってかく恐ろしい言を発したまいます。『我なんぢを我が口より吐出さんとす』と。ああ神はあなたのために独一の聖子を与えたまいし大いなる愛の神ではありませんか。しかるにこの慈愛深き神が今あなたに対ってかく恐ろしい言を語りたもうのでございますから、深く反省なければなりません。
おおどうぞ自らを神の聖前にて反省よ。しかしてあなたがこれまで温然き信者であったということが分りましたなれば今晩それを悔い改めなければなりません。あなたは今まで或いは熱心なる牧師の傍におりて幾分の熱さを受けましたでしょう。或いはまた他の熱心なる兄弟に接して何程かの熱さを受けましたことがございましょう。またこれらのことによってあなたの心に幾分か神を愛する愛が有るかも知れません。また幾分か救いの喜びがあるかも知れぬけれども、これらはみな外面より付け加えたものであるからただ温然いばかりです。もし私共が鉄を取りてこれを爐の傍に置きますなればただ少しばかり熱さを受けます。けれどもその鉄を火の中に入れてふいごを吹いて焼きますなれば火の熱は鉄の中に這入りてその鉄は全く火の通りになります。おお兄弟姉妹よ、神は今晩私共にそれほどの恩を与えたまいとうございます。すなわち外より付け加えた熱さばかりでなく、心の中に活ける聖霊の火を与え、私共の性質を全く潔め、燃ゆる者となしたまいとうございます。
またこの温然き有様はただに危ういのみならず、実に己を欺けることのはなはだしきものでござります。どうぞ十七節をご覧なさい。
なんぢ自ら我は富かつ豐になり乏き所なしと稱て實は惱るもの憐むべき者また貧く瞽ひ裸體なるを知ざれば
おお兄弟姉妹よ、あなたは温然き信者ですか。されば自分をたいそう立派なる信者であると思うておりましょう。私は度々そういう信者を見受けます。すなわち或る者は聖書の知識に進みました。また集会にもよく出席いたします。またその者は主義のために熱心であります。そうしてその者は思うております、我こそは富める者、豊かなる者、また乏しきところなき者である、言を換えて言うなれば我こそ実に立派なる信者であると。おお愚かなる者よ、神は今あなたに向って『實は惱るもの憐むべき者また貧く瞽ひ裸體なるを知ざ』るかと語りたまいます。実にそうでございます。自ら立派なる信者であると思う者は却って神の恩を受くること薄く、神の聖前に喜び少なく、罪に勝つ能力なく、霊の知識は誠に浅うございます。おお自ら富めりと思う温然き信者よ、どうぞ今晩心を虚しくして静かに神の聖前に出でよ。しかして神の光に照らされ自分の実際の有様を知れよ。
神は今晩かく私共に厳かなる聖言を与え、私共の心に痛みを与えたまいますから、今晩その温然き信者を全く棄てたもう聖心でございますか。否々、決してそうではありません。どうぞその次の節の聖言をお読みなさい。
われ爾に勸 なんぢ富をなさんために我より火に煆たる金を買また己が裸體の恥の露れざらん爲に白衣を買て纏へ 又見ことを得ん爲に目藥を買て目にぬれ
おお今晩この集会の中に温然き信者があれば神はあなたに勧めたまいます。神は直接にあなたに語りたまいます。恩と憐れみに富みたもう神は悩める……憐れむべき……また貧しく……瞽……裸なるあなたに今晩溢るるばかりの恩を与えたまいとうございます。『われ爾に勸……』おお兄弟姉妹よ、神は今あなたに近づきたまいました。静かにあなたの前に進みたまいました。昔、穢れたる婦に近づき、穢れたる婦の傍に坐り、穢れたる婦に勧めて大いなる恩を与えたまいし神は……おお主イエスは今晩ちょうどその如く、あなたに近づき、あなたの傍に坐りてあなたに語りたまいます、『われ爾に勸……』と。おお神はあなたに恩の道を悟らせたまいとうございます。あなたに聖霊の賜物を与えたまいとうございます。あなたを温然き有様より救い熱き信者となしたまいとうございますから、今あなたの傍に近づき愛の勧めをなしたまいます。おお兄弟よ、あなたは今晩、主の聖声を聞きますか。主の勧めに従いますか。おお姉妹よ、主イエスは今晩あなたに溢るる恩を与えたまいとうございますが、あなたはこれを受けますか、どうですか。おお兄弟姉妹よ、主イエスは今あなたがたに向って静かに語りたまいます、『われ爾に勸……われ爾に勸 なんぢ富をなさんために我より火に燬たる金を買また己が裸體の恥の露れざらん爲に白衣を買て纏へ 又見ことを得ん爲に目藥を買て目にぬれ』と。
これによって見ますれば神は今晩あなたがたに三の大いなる恩を与えたまいとうございます。すなわち燬きたる金、白き衣、また目薬でございます。今晩誰でもこの恩を受くることができます。もし今晩このところに集まりましたあなたがたすべてが貧しくまた裸体また瞽でございますなれば、この集会の終わらぬ中にこの三の大いなる恩を受けて真実の富を得ることができます。
まず第一に燬きたる金、これは何であるかとなれば、真実の喜楽、真実の平安、真実の能力でございます。神はあなたがたにかくの如き賜物を与えたまいとうございます。あなたはこういう賜物が必要でございませんか。あなたは境遇の静かなるときにその経験が宜しいかも知れません。けれども迫害に逢いますときに……いろいろの試みに出逢うときに真実の喜楽、真実の平安がありますか。またそのことに耐え得る真実の能力がありますか。おお神は今晩あなたがたに燬きたる金のような喜楽、燬きたる金のような平安、燬きたる金のような能力を与えたまいとうございます。故に今あなたに勧めたまいます、『我より燬きたる金を買へ』と。
また第二に『白衣を買て纏へ』とは則ち白き心……清き心のことであります。聖なる……聖なる……聖なる神は私共の心を全く潔めたまいとうございます。あなたがたは今までに罪の赦しを受けましたでしょう。それは実に幸福です。けれども心の有様はいかがですか。今でも汚れてはおりませんか。おお今あなたの心の中に主イエスが王として真実に崇められていたまいますか。もしそうでございませんなればあなたの心はまだ確かに穢れております。おお主イエスは今晩あなたに白き衣を与えたまいとうございます。今晩からあなたの心も性質も全く統べ治めたまいとうございます。主イエスは今晩あなたの心の中に御自分のために潔き殿を造りたまいとうございます。おおどうぞ主イエスより白き衣を買いて纏え。
また第三には見ることを得んがために目薬を買いて目に塗れと勧めたまいます。あなたは果して心の目が啓かれておりますか。あなたは聖書を読むときに明らかにその意味が分かりますか。あなたは聖書を読むときに神の聖旨が分かりますか。あなたは聖書を読むときに主の栄光を見ることが出来ますか。あなたは聖書を読むときに自分の心の有様が明らかに分かりますか。もしこれらのことがございませんならばあなたは確かに瞽であるというの外ありますまい。おお瞽なる信者よ、今晩心の目が啓かれ、神の栄光を見んがために……神の愛を見んがために……天国を見んがために……地獄を見んがために、主より目薬を買いて目に塗れ。
おお主イエスは今晩この三の大いなる恩を与えたまいとうございますがこれを受くる者は誰ですか。おお貧しく、裸体、瞽なる信者よ、今晩どうぞこの三の大いなる恩を受けよ。
それから今一つの大切なる誡命を与えたまいました。どうぞ十九節をご覧なさい。
凡て我が愛する者は我これを責め之を懲す 是故に爾勵て悔改めよ
爾勵て悔改めよ。おお温然き信者よ、悔い改めよ……今までの自分の有様に満足し我は富みかつ豊かにして乏しきところなしと思いたる者よ、悔い改めよ……悔い改めよと神は命じたまいます。もちろん信者たるあなたがたはこれまで一度悔い改めたでございましょう。けれども神は今一度あなたに悔い改めを命じたまいます。即ちあなたの生涯に罪を犯したことがあれば今晩それを悔い改めよ。また今あなたの心の中に汚れたる思いがあるなれば、おおどうぞ悔い改めよ。またあなたの心の中に高慢があるなれば、おおどうぞ悔い改めよ。またあなたの心の中に少しでも我儘があるなれば、おおどうぞ悔い改めよ。またあなたの心の中に悪しき癖があるなれば今晩それを悔い改めよ……悔い改めよと神は命じたまいます。おおあなたは今晩この命令に従い全き悔い改めをいたしますか。されば主より大いなる恩を頂戴します……聖なる喜楽……聖なる平安……聖なる能力……また清き心を頂戴し、またあなたの心の目を明らかにせられます。おお温然き信者よ、悔い改めよ……悔い改めよ、今晩全くその罪を棄てて主よりこの三の大いなる恩を受けよ。
| 序 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 目次 |