第十四 終わりの声



 終わりにこの八章において三つの声を見ます。信仰の声、望みの声、および愛の声であります。

 第一の声は六節にあります。

六節『われをなんぢの心におきておしでのごとくし なんぢのうでにおきておしでのごとくせよ』

 これは新婦が新郎に向かって叫ぶ叫びであります。これはどういう意味でありますかならば、どうか君の愛のために君の心のうちに私を覚えたまえという意味であります。出エジプト記二十八章に祭司のおさの事が書いてありますが、祭司のおさ胸牌むねあてに十二の玉があり、その玉にイスラエルの子らの名が書いてありました。また肩帶かたあてにも二つの玉があって、その上にもイスラエルの子らの名が書いてありました。すなわちこれは心の上に、また腕の上に置かれたるおしででありました。そうですからこの六節は私共に祭司のおさがある事を示します。すべての力と深き愛をちたもう王なる祭司がありまして、その心の上にも、またその腕の上にも、私共の名が書いてあります。そうですから私共はいつまでも守られ、またいつまでも幸福を得て生涯を暮らす事を得ます。おお私共の祭司のおさはいま天にいましたまいます。この第一の声は信仰の声であります。

 第二の声は愛の声であります。

十三節『なんぢそのなかに住む者よ 伴侶等ともたちなんぢの聲に耳をかたむく われにこれをきかしめよ』

 これは新郎の声であります。新郎はあなたの声を聞きたまいとうございます。これは新郎の願いであります。私共は新郎に祈禱いのりを献げますが、新郎もまた私共に祈りたまいます。すなわち『われにこれをきかしめよ』と言いたまいます。言い換えれば祈れよ祈れよと言いたまいます。時を費やして祈れよと仰せたまいます。私共は真正ほんとうに新郎を愛する愛がありますれば、他の事を捨てても祈らなければなりません。かおかおとを合わせて新郎と交わらなければなりません。

 第三に望みの声があります。

十四節『わが愛する者よ ふ急ぎはしれ かぐはしき山々の上にありてしかのごとく 小鹿のごとくあれ』

 これは新婦の声であります。急ぎ走れよ、おお主よ速やかにきたりたまえという声であります。黙示録二十二章七節『われすみやかに至らん』、なおその十二節『われすみやかに至らん』、また二十節われかならずすみやかに至らん』。主はこのように三度みたび約束なしたまいましたが、その最後に『アメン 主イエスよ きたり給へ』という祈禱いのりがあります。これは聖書の最後の祈禱いのりであります。またこれは愛の願いであります。雅歌の最後の祈禱いのりもこの黙示録の最後の祈りと同じ事であります。おお主よきたりたまえ。

 兄弟姉妹よ、主は速やかにきたりたまいます。いつであるかわかりませんが、或いはこのたびが私共の最後の修養会であるかも知れません。或いはこの次には天において聖別会を開くようになるかも知れません。私共は今朝ただいまから晩餐を守りますが、これはこひつじの婚姻のえんの雛型であります。けれども近いうちに天において真正ほんとうに新郎との婚姻があります。私共はその望みをっていますから、愛する主をち望みとうございます。『ふ急ぎはしれ』。きよめられ、全き愛を得ました者は、心よりこれを祈る事を得ます。




ビ・エフ・バックストン講演

雅 歌 霊 解

頒布価 80円


大正四年十二月二十三日初版発行
昭和二十八年五月二十日再版発行

  編集者  米田 豊

    東京都武蔵野市境一四一六
  発行人  落田 健二

    東京都千代田区神田鎌倉町一
  印刷人  西村 徳次
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    東京都武蔵野市境一四一六
発行所  バックストン記念霊交会
      振替東京六六六四九番


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