この書の初版が発行されたのは明治三十三年十二月二十八日で今から五十四年以前、すなわち半世紀以前のことである。だからこの書に納められてある講話は私達の父や祖父、或いは曾祖父たちに対してなされたものである。バークレー・フォウェル・バックストン師が万里の波濤を超えてはるばる日本に到着されたのが、一八九〇年十一月二十四日(明治二十三年)で、雲州松江で働きを始められたのがその翌年の四月であった。その当時の鉄道の終点は岡山で、ここから四十曲の険を越えて徒歩で松江に行かなければならなかった。爾来月を追い、年を重ねること六十幾星霜、世は既に移り変わり、空にはジェット・エンジンが唸り、原子力の時代にさえなりつつある。だがしかし、『人はみな草のごとく、その栄光はみな草の花のごとし。草は枯れ、花は落つ。されど主の御言は永遠に保つなり』とあるごとく、神の福音とその聖言には昔も今も何の変遷もない。我々は静かに座してこの書を繙き、バークレー・F・バックストンを通して神が語りたもう聖声を聴こうではないか。
『赤山講話』とはバックストン師が日本に到着された翌年、雲州松江の赤山に居を定め、この処で信徒教職達を集めてなされた講話の一部を集録し、これを『赤山講話』と題したのである。おそらく日本のキリスト教会において説教集として現在もなお広く愛読されているものでは本書が最古のものでなかろうか。
今春、日本基督教協議会文書事業部の推薦図書として、その後援によってビ・エフ・バックストン師の伝記『信仰の報酬』を発行し、神によって遣わされたこの偉大なる器に対する感銘が醒めやらぬうちに、更に同師の代表的講演集『赤山講話』の発行を得て同師の偉容に接することは誠に感謝の至りである。
前述のごとくこの書は半世紀前のもので、その後たびたび改訂はされているがその文章は非常に古い。といってこれを全然現代語に改めることはこの書に盛られている独得の霊味を失うことになる。それで今回は文字を新仮名に改める程度に留めた。また引照されている聖句は元訳が使用されてあるが、これを改訳に改めるにしても現代では改訳そのものが既に古いと言われる時代である上、今日我々が元訳聖書を手に入れたいと願っても容易に入手しがたい時代であるので、これはかえって元訳のままでおく方がよくはないかと思われたのでそのまま訂正しないことにした。
一九五四年六月一日
発行者識
頒布価 金300円
明治三十三年十二月二十八日一版発行
昭和二十九年 六月 二十日四版発行
講述者 B・F・バックストン
発行人 落 田 健 二
印刷人 西 村 徳 次
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発行所 東京都武蔵野市境南町四ノ七ノ五
バックストン記念霊交会
振替口座東京六六六四九番
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