これは愆祭の例です。私共は愆祭に由て神の惠を解ります。愆祭は何の爲めに設けられてありますか。それは神の民が罪を犯しまするならば、その罪を贖ふ爲であります。けれども最早罪を悔改めて、神の恩を得たる者は、復た罪を犯さずしてその時から聖き生涯を送る筈ではありません乎。けれども神は茲で尚々恩を顯はして、罪を犯しましたならば、その罪を贖ふ道を示し給ひます。
罪を犯してその罪の贖を求めまするならば、何卒屠られたるキリストを御覽なさい。それを見まするならば、必ず碎けたる心を以て、罪を惡みます。キリストは神の前に死給ひました。一方より見ますれば、キリストはサタンの前、また人間の前に死給ひました。それはサタンの働また惡き者の働でした。けれども本當にそれは神の前でした。それは神の聖旨を成就する事でした。それは神が許し給うたる事でした。キリストはそれを曉り給うて、父の手よりその盃を飮み給ひました。ピラトの手よりではありません。祭司長の手よりではありません。羅馬の兵士の手よりでもありません。本當に神の聖手よりその盃を飮み給ひました。キリストは實に神の前に死給うたのであります。
こゝに血(二節)と脂(三節)と肉(六節)の用法に就て錄されてあります。
血は死の證據です。また何人でも見る事が出來る所にその血を注ぎました。それ故に何人にもその死が分りました。キリストは如斯に死給ひました。キリストの贖罪は方隅に行はれたる事ではありません(徒二十六・二十六)。その時に凡ての人々は國々より、エルサレムに集りました。さうして彼等の目前に、公けに行はれました。キリストの血は本當に人間の目前に流されました。今私共は人間にそれを顯はす責任をもってをります(加三・一參照)。私共は何人の目前にても、キリストを顯はすべき筈です。即ち壇に流されたる血を、何人にも示さねばなりません。
脂は心の至美しき情と志と願を指します。脂は全く神の屬となりました。キリストの情、志、願等は、皆神の屬でした。全きものとして、只だ神に献げられたることを見ます。
肉は祭司長等が食しました。これに由てそれを献げたる者は、神に受入れられたることが解りました。それは神が受入れ給うたる表面の徵でした。然ですから夫を献げたる者は、滿足して歸ることを得ました。罪の爲に詛を負ひました。けれども今贖罪の爲に、その詛が全く取除かれましたから、安心して歸ることを得ました。
さうですから、神は祭司に毎日の生活を與へ給ひました。哥前九・十三、十四を御覽なさい。福音時代に於ても同じ規則がありました。本當に福音を宣傳ふる者は、それに由て生活を立てる筈です。これは神の規則です。
けれどもこゝに尚々深い意味を見ます。祭司はどういう食事を得ましたかならば、神の聖き物でした。祭司は實に神に献げられたる物のみを食べました。私共は心中にどういう食事を得ますか。或る信者は肉に屬る種々なるものを讀みます。世に屬る新聞や雜誌を好みます。けれどもそれはこの法に背きます。祭司は神の聖き物ばかりを食する筈です。又神は如斯祭司に必需物を與へ給ひました。神は實に御自分の働人に、その働の爲に無くてならぬ聖き食事を與へ給ひます。必ず神はあなたに日々の靈の糧を與へ給ひます。毎日聖き食事、主イエスを食はしめ給ひます。さうですから何卒毎日至聖所に入りて、それを求めて神の前で御食りなさい。
十二節に『感謝のために』とあります。また十六節に『
願還かまたは自意の禮物』とあります。酬恩祭に此三の犧牲があります。私共はさういふ時に、格別に神と交ることを得る筈です。酬恩祭は神と交ることを指します。さうですからさういふ時に格別に神と交ることを得ます。
私共は感謝の時に、格別に神の聖貌を見る筈です。詩百十六・十七を御覽なさい。これは酬恩祭です。私共は如斯に酬恩祭を献ぐる筈です。神の恩と神の慈愛を解りて、主イエスの贖を見て神に酬恩祭を献ぐる筈です。
けれどもこゝに感謝の献物を献ぐる時にも、血を流しました。私共は罪の赦を求むる時に、流された寳血に依賴まねばならぬことが分ります。けれども啻にそれのみではありません。私共は感謝を献ぐる時にも、流されたる血に依賴まねばなりません。何故ですかならば私共は神に感謝するに足らぬ者です。神に感謝を献ぐる價値のある者ではありません。さうですから寳血に依賴んで近づかねばなりません。私共は只救はれたる罪人として感謝を献ぐる事が出來ます。何卒歌を謠ひまする時に、感謝を献げまする時に、それを覺え度御座ります。私共は血を流しませずして、酬恩祭を献ぐることを許されません。
また十二節、十三節を見まするならば、酬恩祭と共に素祭を献げました。素祭は聖き生涯を指します。神に聖き生涯を献ぐる事です。私共は神に感謝を献げ度御座りまするならば、聖き生涯を送らねばなりません。神の前にラッパを吹きたる祭司、或は歌を謠ひたるレビ人は、聖き布の衣を着て居りました。私共は如斯な感謝を致し度御座りまするならば、聖き生涯を暮さねばなりません。神は汚れたる唇よりの感謝を求め給ひません。斯る事は却て神の聖前に無禮なる事であります。
これはそれを献げたる者が食したる事です。私共は感謝を献げまするならば、その爲に靈の糧を得ます。その爲に本當に天のパンを食ふことが出來ます。本當に靈と眞を以て神に感謝しまするならば、その爲に靈の糧を得ます。私共は歌を謠ひまするときに、その歌の詞を曉って感謝しまするならば、新しき恩を得ることが出來ます。
けれどもこの肉は新しき時に食べねばなりません。それを翌朝迄殘すことを許されません。その時に直に食べねばなりません。私共は過去に献げたる感謝の爲に、靈の糧を得ません。現今の感謝の爲に新しき靈の糧を頂戴することが出來ます。心中に感謝の靈がありまするならば、其爲に生命のパンを得ます。私共は感謝の靈がありませんならば、酬恩祭を献ぐる心がありませんならば、如何に歌を謠ひましても、靈の糧を得ません。けれども私共に酬恩祭を献げ度心がありまするならば、神は必ず靈の糧を與へ給ひます。何卒感謝は神に献げられたる犧牲であることを悟り度御座ります。
またこれは自分の喜の爲ではありません。或は他の人を喜ばす爲でもありません。たゞ神の前に馨しき香の献物を献ぐる爲に感謝をいたすのであります。神はそれを受入れて喜び給ひます。ユダヤ人は祭司がその酬恩祭を食ふのを見まして、自分の酬恩祭が神に受入れられたることが解りました。私共は感謝の献物を献ぐる時に、神がそれを受入れ給ふたる事を確信して、神と共に喜ぶ事が出來ます。
『願還かまたは自意の禮物』。私共は神に約束をしまするならば、その爲に神と交る事を得る筈です。或は格別に物を献げまするならば、それに由て神と交る事を得ます。申十二・十七、十八を御覽なさい。自意の禮物たる酬恩祭でした。收穫の感謝の爲にそれを献げました。また神の前にそれを食はねばなりません。これは神を喜ばす爲でした。神に献げられたるものですから、神の前にそれを食ふて喜ぶ筈です。
それ故にこの酬恩祭を二日の間に食ふことを許されました。その樣に自意の禮物の爲に、尚暫く神と交りて、神の靈の糧を頂戴することが出來ました。けれどもこれでも新しいうちに食はねばなりません。少しでも腐りまするならば、食ふ事を許されません。神は毎でも私共に新しき靈の糧を與へ給ひ度御座ります。私共は昨年恩を得ましたから、今それを覺えて恩を得ると思ふ事は間違です。神は新しき聖言を與へて、毎でも新しき恩を授け給ひます。
これは聖き食事です。また潔き者の爲です。私共は罪に由て汚を得まするならば、神の聖き靈の糧を得ることは出來ません。たゞ潔き者のみがこれを食ふことを得ます。私共は毎でも寳血に依賴み、寳血に潔められて、それを食ふ筈です。
感謝を献げる事は夫程に貴い事です。私共は祈の貴い事は分ります。けれども度々感謝の貴い事を忘れます。敎會に於て、歌を謠ふ時には、祈をなす時の如く、嚴肅なる念を以て歌はねばならぬ事を感ずる者は少う御座ります。けれどもこれは祈のやうに貴いものです。この二十、二十一節の如く、汚れたるまゝにて、酬恩祭を献げまするならば、神は御自分の在す所より私共を投出し給ひます。さうですから畏を以て神に感謝を献げねばなりません。
さうですから脂と血も唯神の屬でした。脂は心の一番貴き情を指します。一番高き願と慕を指します。これは皆神の屬でした。神にそれを献げねばなりません。神の爲にそれを用ひねばなりません。自分の爲にそれを用ひますならば、大なる罪です。またその獸の血も神の屬です。血は生命です。生命は貴いものです。神の屬です。生る者を見まするならば、その生命は神より出でたる者にして、神の屬である事を感じ度御座ります。
さうですから祭司はその二の部分を得て、それを食ふことが出來ました。即ち胸と腿です。胸はキリストの愛情を指します。腿はキリストの力を指します。如斯にキリストは其愛と力を私共に授け、私共の爲に用ひ給ひます。何卒感謝してそれを受入れなさい。私共は度々不信仰に陷りて、主の愛を感じません。或は主の力は私共の爲めでありませんと思ひます。何卒かゝる不信仰を棄てゝ、祭司が毎でも胸と腿を得てそれを食ひました如に、心中にキリストの愛と力を信じて、それに依賴みなさい。
神は私共を祭司とならしめ給ひます。寳血に贖はれて聖靈の膏を注がれたる者は、神の祭司です。神は祭司に如斯に聖なる糧を與へ給ひます。この次の章を見まするならば、神はイスラエル人の祭司を任職させ給ひました。又任職を得るうちに、神は彼等を養ふ爲に、方法を備へ給ひました。神は毎でも如斯に働き給ひます。私共に務を命じ給ふならば其務を果す爲に、無くてならぬ恩を與へ給ひます。神は私共のものを使うて、御自分の働をなさしめ給ひません。毎でも無くてならぬ恩と力と愛を豐かに與へて、その働をなさしめ給ひます。
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