あかつき の 待 望まちのぞみ

アンドリウ・マーレー著
小  島  伊  助訳



第  一  日



『アブラハム朝つとおきて』(創世記二一・十四
『アブラハム朝つとおきて』(創世記二二・三

 アブラハムの生涯のうち『アブラハム朝つとおきて』と、二度このことが記されております。いずれも彼にとっては痛ましい出来ごとでありました。最初はその子イシマエルを自分の家から追いだす時(二一・十四)。次は、もっとつらいことでありましたろう、イサクを献げた時のことであります。しかも彼が朝はやく起きでたとは、如何にも彼が神のむねを行なうに何ら躊躇逡巡するところなく、真心まごころから欣然きんぜんこれにお従いしたことを示しております。

 アブラハムの受けたこの早起きの報酬は、如何にさかえあるものでありましたか、彼は三日目には山に到着致しました。そこに於て神様は彼に顕現あらわれて下さいました。──かれの従順には神の仁慈いつくしみが伴ってまいりました。その子は死よりよみがえれる者の如くにして返され、恩恵の約束は更に誓約をもって堅うされました。『われおほいなんぢめぐみ又おほいなんぢの子孫を增して』(二二・十七)と。アブラハムは此処ここで新しく、神を不思議を行うお方として知り奉りました。『ヱホバ豫備そなへたまはん』とあかしすることが出来るに至ったのであります。

 朝つとなる従順と全き服従の献物ささげものもて近づく者にあらわさるるは、十字架にそなえられたる恩恵であります。従ったところに祝福があり、献げたところに増加があり、死に切ったところによみがえりがあり、己を捨てたところに神に満てるすべてのものの盈滿えいまんがあります。遠く旧約の昔に住みながら、はるか彼方の新約のカルバリーの栄光を幻示されたアブラハムの報酬は! 実にかれの早起きに酬いられたというべきであります。

 兄姉よ、あなたも何かつらく又難しく見ゆる事柄に召されたる時には、アブラハムの如くになさい。暁に起きいで、聖旨みむねのみを遂行し奉らんとの甘んじたる霊をもって、あなたの神にまみえなさい。あなたもアブラハムの足跡にならって一切を神に犠牲として、しかり、いと最愛のものすらも、献げんとならば朝まだき神にあうべくきなさい。その早起きに於てあなたにも神はしゅとして自らをあらわし預備そなえられたる一切の恩恵を持ち出し下さいましょう。あなたにも神は誓約をもってこれを堅うし給いましょう、『われおほいなんぢめぐみ又おほいなんぢの子孫を增して』と。アブラハムはくの如くにその早起きに対して酬いられたのであります。



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