第 三 十 日
『…… 夜には出でてオリブといふ山に宿りたまふ。民はみな御敎を聽かんとて、朝とく宮にゆき、御許に集れり』(ルカ福音書二一・三七、三八)
『彼ら朝早く路をすぎしに、無花果の樹の根より枯れたるを見る。ペテロ思ひ出して、イエスに言ふ「ラビ見給へ、詛ひ給ひし無花果の樹は枯れたり」。イエス答へて言ひ給ふ「神を信ぜよ」』(マルコ福音書十一・二〇〜二二)
それは主の御生涯の終り頃、受苦も間近に切迫せる時でありました。主はオリブの山にその夜を過し給い、朝とく都に帰り給えば、群衆は御許に参集いたしました。これらの日の間の或る日、朝早く、主はかの輝かしい言葉を発し給いました、『神の信仰をもて』と(=二二節のギリシャ語からの逐語訳)。そして、それとともに、かの『山を移す』ことにかかわる有名な御言葉や、『凡て祈りて願ふ事は、すでに得たりと信ぜよ、然らば得べし』などの約束も語られたのでありました(二三、二四節)。
望むらくはイエスを愛すると称する凡ての者、又、昼はなすべきことが多くあると呟くすべての者等のこの恵を知らんことを! 朝まだき主に来って主より直接に教えらるるとは何たる恵ぞや! 弟子達も、もし、かの朝早くイエスと偕にいなかったならば、如何ばかりの御教訓を失ったことでありましょう。が、私共はいったい如何ばかりの損をすることでありましょうか、かくも主が懇ろに私共を訪れ、私共を待ちわび給う朝の時に彼に耳を傾け申す時を待ち奉らないために! 『凡て祈りて願ふ事は……』なる御言葉の意味に関する真の御教訓は、忠実に忍耐もて、朝、イエスより学ばんと求むる者に与えらるるところのものでありましょう。
朝まだき、夙に。わが霊魂よ、あなたは特に朝に於てあなたの主の御教を期待し奉ることが出来るのであります。
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