第 三 十 日 存 つ 果
『爾曹をして往て實を結せ其實を存しめんが爲……に我なんぢらを立たり』 (約十五・十六)
永く存たない實がある。梨や林檎の或種類のものは一時に使用せねばならぬが、或種類のものは翌年迄も保存する事が出來る。其樣に基督者の働に於ても或果は持續ない。其當時結構なる德を建つる働であって、尚此世にも神の敎會にも永久的印象を與へないものがある。夫に引換へて世々限りなく其痕跡を留むる働がある。是はパウロが『我言し所また我宣し所は人の智慧の婉言を用ゐず唯靈と能の證を用ゐたり 蓋なんぢらの信仰をして人の智慧に由ず神の能に由しめんと欲ばなり』(哥前二・四、五)と云った處のものである。人の智慧と力が加はるに從ひその信仰は不堅固になるものであって、神の靈による時に、それは神の能の中に確立するものである。
果はその樹の性質を顯すものである。存つ處の果を結ぶ秘密は外でない。我等がキリストの衷に居るならば、その結ぶ處の果は永く存つであらう。我等の神たる農夫によりて、自己の意旨と努力とを剪り除られ、潔めらるゝに從ひ、又神がその靈によりて我等の衷に働き得給ふ爲に外界より退くに從ひ、我等は更に完全にキリストの衷に居り、我等の結ぶ處の果は更に永く存つに至るであらう。
彼は卿をして果を結ばせ、その果を存たしめんがために選び給ふたとは何たる幸なことではないか。彼は存たない果をその枝の一つにも結ばしむることを欲ひ給はない。我等が彼の選の惠を深く悟るに從ひ、自他のために永生に至る果を結ぶことは一層確實となるであらう。この御計畫は彼のものである。彼はこれを結ばしめ給ふであらう。その果は彼のものである。彼はこれを結ばしめ給ふであらう。存つ事は彼に關はることである。彼は必ずやこれを維持ち給ふであらう。
願はくば福音の役者たることを以て自ら任ずる各をして、靜まりて默思せしめよ。卿は永遠に留る印象を其四邊の人々に與へて居るであらうか。これは卿の說敎や、敎誡や、又は意旨の力や、感化力によりてはなし得ない。これは神の命と能とを充分に卿の生命に有つことによる外はない。それは卿が眞實に依賴の生涯を送ってキリストと偕に破れざる親密なる交を有つことによるのである。彼に居ってのみ、存つべき多の果を結ぶことを得るのである。
頌むべき主よ、願はくば我魂にも默示して多の果を結ばしめんために我を選び給ひし事を知らしめ給へ。汝の御計畫を悟り得るために汝が我を選び給ひしことを確信せしめ給へ。一切を抛って我自らを汝に與ふる事を以て我力たらしめよ。汝は自ら始め給ひしところの事を完全うし給はん。願はくば永遠の能を以て我を捕へ、存つべき果を結ぶ爲に永遠の愛と計畫との中に我を引きて住まはしめたまへ。
『爾曹をして實を結しめんが爲』と。おお我天の葡萄樹よ、果、繁き果、多の果、存つ果は汝が我に與へ給ひし唯一のものなるを我魂は少しく悟り得たり。我此に在り、頌むべき主よ、汝の御目的を我衷に成遂げ給へ。我をして多くの果、存つ果を結びて、汝を崇むることを得させ給へ。
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