聖書全体を通覧すれば、創世記の第一章より第十一章までは神が万国民を取り扱いたもうことを記し、その第十二章より使徒行伝の第二章までは神が如何にユダヤ人を取り扱いたもうかを記し、そしてペンテコステ後は再び神が万国民を取り扱いたもうことを記している。
ヘブル書第十一章一節より二十二節までに神の完全なる恵みを表す七人の代表的人物が記されている。すなわち
一、アベルは罪を自覚する霊
二、エノクは神と交わる霊
三、ノアは更生の霊
四、アブラハムは信仰の霊
五、イサクは神の子たる霊
六、ヤコブは奉仕の霊
七、ヨセフは苦しみと栄えの霊
を表す。これらの人物によりて神の円満なる霊の働きを見ることができる。しかしてその中で最も肝要なるはアブラハムである。されば創世記中にも彼について最も多く記されている。すなわち十二章より二十五章までは彼に関して記し、二十六章より三十五章まではイサク、三十七章より五十章まではヨセフのことに関している。
アブラハムは信仰の模範である。
されば知れ、信仰に
神がアブラハムに対して『
また『アブラム、ヱホバを信ず。ヱホバこれを彼の義となしたまへり』(十五章六節)の
既に言えるごとく創世記十二章より二十五章まではアブラハムに関する記事で、本章は彼の召しについての記事であるが、これよりして彼の信仰を学ぼう。
神の命令は『
されども『出で、別れ、離れよ』との困難なる御命令と
主は『
さてアブラハムに与えられた約束は七箇条である。
一、大いなる国民となされること、
二、大いなる祝福を受けること、
三、大いなる名を与えられること、
四、
五、彼を祝する者は祝せられること、
六、彼を詛う者の詛われること、
七、天下の諸族、彼によりて祝福せられること、すなわち彼の子孫よりキリスト
神はアブラハムを忠実なる者と見そなわして彼を召し出し、この驚くべき約束を与えたもうた(ネヘミヤ記九章六〜八節)のである。
アブラムは御命令の如くに
一、国より
二、父の家に別れ (十二章四、五節)
ついにまた
三、親族とも離れた (十三章十一節)
今その次第を考えてみよう。彼は国を出でたが父の
彼の従順の結果として彼は安全にカナンに到着した。しかしてそこにて神は彼に
この時に約束は堅められた。すなわち一節に『示さん』と言いたまいしその地を今は『与へん』と仰せたもうた。的確なる約束の保証である(七節)。
しかして彼は『ヱホバに壇を築』き、また『天幕を張』った(十二章七、八節)のである。壇と天幕とは彼の生涯の特徴である。すなわち祭壇は彼の奉仕の生涯を表し、天幕は賓旅の生涯を示している(ヘブル十一章九節)。しかして彼が約束の地にありてなお賓旅の生涯を送ったその秘訣は、ヘブル書十一章十節にあるごとく『神の營み造りたまふ
さてアブラハムがカナンの地に入るやそこに二つの敵に出会った。すなわち
神は信仰を試みるためにしばしばこの二つの敵を用いたもう。かのイスラエルの人々がエジプトを出でた時にも、レピデムで水の無きに苦しんでいた時にアマレク
かく彼は一度約束の地を去ってエジプトに下ったが、そこにては神も彼に顕れたまわず、彼も祭壇を建てることをなさなかった。その地にて彼の産業は大いに増加したけれども霊的生涯には何の得るところもなかった。顕現なく奉仕なき生涯は
エジプトの字義は英語の straiten にて『行き詰まる』の義である。約束のカナンを棄てこの世のエジプトに下り信仰の生涯に『行き詰まる』ことなき者、果たして幾人ぞ。されば
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