この章はアブラムの名の変更することであるが、ここにまた彼が既に与えられた約束の拡大されかつ明瞭にせられることが
『アブラム九十九歲の時ヱホバ、アブラムに
『我は全能の神(エルシャッダイ)なり』(一節)。エルシャッダイとは生命を支える神という意味である。シャッドは『胸』或いは『乳房』の義で、生産をなさしめることを含む。アブラムは子孫を与えられる約束を得たけれども、サライが既に年老いているゆえに、他の手段を用いてこの約束を成らしめんとした。それゆえ神は今、御自身全能者である、生産をなさしめる神であることを示したもうのである。霊的の子を産むことは信者の特徴である。信者には皆この願望がある。私も二十五年前に救われてから直ちに霊魂を救いたいとの願いが起こった。しかし実際、霊の子を生むことは、『全能の神』によるのである。
『
これは良心の呵責から全く
これはまた愛の完全とも言うことができる。
三、奉仕の完全 (ヘブル書十三章二十一節)
主イエスを死の中より復活せしめたもうた神は、キリストの血を当て嵌めて我等の良心を全うし、愛に全うしたもうばかりでなく、すべての善き事につきて我等を全うして神に奉仕せしめたもうのである。
四、信仰の完全 (テサロニケ前書三章十節)
パウロはテサロニケの信者の信仰の欠けたるところを全うしたいと願ったことであるが、この信仰の完全こそ第十七章の御命令の主意である。ヤコブ書一章三、四節には、信仰の
歴代誌下十六章九節には、神は『
神は十二章二〜三節及び十五章四、五節の約束をば一層明瞭になし、またその範囲をも拡大なしたもうたのである。その契約はすなわち(一)神とアブラムの間の契約(二節)、(二)多くの子孫を得せしめること(二、六節)、(三)多くの国民の父となること(五節)、(四)これは永久の契約たるべきこと(七節)、(五)カナンの全地を与えて永久の産業となさしめたもうこと(八節)であった。これらの約束は文字通りに成就し、なお成就せんとしている。カナンの全地は長く異邦人に占領されていたが、ユダヤ人はこの地が契約によって神より与えられたものであることを決して忘れなかった。欧州大戦争の前にトルコはこれをユダヤ人に売却せんとしたけれども、彼らはこの地は神より与えられた嗣業であるから買い取るべきものでないと言ってこれを承諾しなかったという。その後果たしてトルコの手を離れ、ユダヤ人の手に帰することとなったが、完全なる独立国として充分なる発展を遂げる日も必ず来ることであろう。
とにかく神はかく御自身に従順なる者に対してその約束をますます明瞭になし、これを拡大し堅からしめたもうのである。
名はその性質を表すものであるから、新しき名の与えられるは新しき性質の賦与されたことを意味するのである。
第二章のところで神の七つの
今ペテロについて言えば、ペテロ後書一章一節に彼は『イエス・キリストの
そのごとく今アブラムがアブラハムという新しき名を与えられたのは新しき性質の賦与を意味している。しかしてこの名の変更した仕方は、アブラムに一字の気音(h)を加えられたのである。この気音による文字『ハ』は、気息を吹き出さずして発音することのできざる字である。サラの名の変更もまた同様である(英訳ではSaraiからSarahとなる)。すなわちヨハネ二十章二十二節に主が弟子たちに格別なる特権を与えんとて息を吹きたもうたごとく、ここでも神は彼らに息を吹き入れて子孫を生むべき特権を賦けたもうたのであるとジューク氏は説明している。
アブラハムとその子孫はこの契約に与ることの
一、神の
二、イエス・キリストによりて誇り
三、肉を
であると言っている。
コリント後書六章十六節以下に記されてある約束は、その実質においてアブラハムに与えられた契約と同じものである。されば我らは同七章一節にある意味においての割礼を受けねばならぬ。またガラテア書六章十四〜十七節を見れば、パウロが肉体に受けた迫害の痕跡は彼の霊的割礼の徴であった。そのごとく我等も真に心に割礼を受くれば必ずその徴があるべきである。
神はアブラハムの信仰を励まさんがために細かきところまで示したもうた(十五節)。約束の子はただアブラハムの子であるばかりでなく、またサラより生まれるべきであった。しかしてその子はイサクと名付けらるべきことをも明らかに示された(十九節)。かくアブラハムもサラもその嗣子の如何なる者であるかを明らかに意識することを得せしめたもうた。かくのごとく我等も意識的にイエス・キリストを内住せしめ奉るのでなければ霊的子孫を生むことはできないのである。
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