第十九 敎會の組織及び發達



組織や方法についみたまみちびきを求めよ

第 六 章

 聖靈はづ組織や設備を造って、獻立こんだてをしてそれを進め給ひません。はたらきが進むに從って、必要に應じて如何いかに組織すべきかを示し給ひます。今ではこれおほいに大切であります。聖靈はきまった組織を與へ給ひません。あるひ罪人つみびとを救ふにも、きまった方法を與へ給ひません。私共わたくしども何時いつでも聖靈にたよりて、その折々のみちびきに從はねばなりません。神は或時あるときある方法を與へ、の時には別の方法を與へ、それによりて勝利を與へ給ひます。私共わたくしども何時いつも同じ方法を用ひなければならぬ事はありません。聖靈に導かれて働かなければなりません。敎會の組織においても其通そのとほりであります。六章より前には施濟ほどこしついて格別にきまった組織がありません。しかし今その必要が生じましたから、七人を選んでそのはたらきを命じました。

サタンの妨害さまたげ

 五章をはりで敎會が勝利を得て、外からの敵に向った事を見ますが、今六章はじめに敎會のうちに惡い事がありました。怨言つぶやきや、相互たがひあひだにがかんがへが出來ました。これ尚々なほなほ恐ろしい事であります。ども聖靈は敎會を導きて、其時そのときにも全き勝利を與へ給ひました。今迄いまゝでサタンは色々の工夫をもっそのはたらきを妨げんと企てた事を見ます。第一、四章おいて反對者がありました。名高い人々が反對しました。第二、五章一節から十一節までところおいて、サタンは眞似まねする事によりて神のはたらきを妨げました。第三、五章十七節より四十二節までところおいて、迫害によりて妨げました。第四、この六章おいて敎會内の分離わかれによりて妨げます。第五、七章を見れば信者を殺す事にりて妨げます。そのやうにサタンはこのいつゝの方法をもって、是非すくひはたらきを妨げたうございました。今この六章おいては、格別に敎會内に分離わかれを起したうございました。

一節

 『當時そのころ弟子たちのかずおほくくはゝり』。其時そのときあぶない事が出來ました。かずすくない時にはあぶない事はなく、一致和合はやすい事でありました。ども弟子のかずくはゝりました時に、敎會が分離しました。これあぶない事でありました。『ギリシヤ方言ことばのユダヤびと』。これは多分ギリシヤにった者でありますが、其時そのとき神を禮拜するためにヱルサレムに參りました者でせう。『その嫠等やもめたちが日々の施濟ほどこし遺漏みおとされしをてヘブル方言ことばのユダヤびと』、すなはち平生ユダヤにるユダヤびとむかって、『怨言つぶやきし事ありければ』。じつこれあぶない時でありました。ども十二人の使徒等しとたちが聖靈に滿みたされて、それを處分致しました。

最も大切なる奉仕

二〜四節

 使徒等しとたちは敎會にその責任を負はせました。このはたらき使徒等しとたちはたらきではありませんから、信者がそれをせなければなりません。これは信者のはたらきでありますから、信者等しんじゃたちが自分のはたらきを務めて、使徒等しとたち其樣そんな重荷を負はせぬやうに勸めました。これは聖靈のみちびきであります。度々たびたび牧師や傳道師が自分の手にかういふはたらきを持ってる事を願ひますが、其爲そのために自分の格別のはたらきを妨げられます。又其爲そのために敎會には損を生じます。敎會が其樣そんはたらきを致しますれば、其爲そのために敎會はめぐみを得て罪人つみびとは救はれます。どもこの使徒等しとたちかねを施す事よりももっと大切なはたらきがあります。『神なる父の前にきよくしてけがれなくつかふることは孤子みなしご寡婦やもめその患難なやみなか眷顧みまひまたみづかまもりて世にけがされざるこれなり』(雅各書ヤコブしょ一章廿七節)。うですから寡婦やもめを顧みかねを施す事はきよき宗敎であります。ども使徒等しとたちそれより尚々なほなほ大切なる職務つとめがありました。そのはたらきなんであるかといへば、四節にあるやうに『常に祈る事とみちつたふること』であります。靜かに自分のへやで祈る事、聖書の聖言みことばついて祈る事、又おほやけに大膽だいたんみち宣傳のべつたへる事であります。これ私共わたくしどもの格別な職務つとめであります。傳道者は格別にこの二つを學ばなければなりません。ことばを換へてへば、傳道者の學ぶべき事はこの二つすなはすはる事と立つ事であります。このふたつの事を眞正ほんたうに學びますれば、必ず成功ある傳道者となります。靜かに神の前にすはって祈り、大膽だいたんに人間の前に立ってみち宣傳のべつたへますれば、必ず其爲そのためおほくの人が救はれるに相違ありません。

祈禱いのりの大切なる事

 槪略あらまし使徒行傳を見ますと、祈禱いのりのいかに大切であるかゞわかります。一章十四節『心をあはせてつね祈禱いのりつとめたり』。二章四十二節『常に……祈禱いのりとを務む』。三章一節祈禱いのりの時』。四章二十四節『心をあはせ神にむかひ聲をあげいひけるは』。六章四節『常に祈る事』。六章六節『使徒たち祈りて』。七章五十九節『彼等が石をてステパノをうてる時かれいのりいひけるは』。八章十五節『彼等が聖靈をうけために祈れり』。九章十一節かれいのりをり』。十章二節つねに神に祈禱いのりせり』。十章九節『ペテロ祈禱いのりのために屋上やねのぼれり』。十二章五節『敎會はこれため懇切ひたすら神に祈る』。十二章十二節おほくの人こゝにあつまりていのりゐたり』。十四章廿三節斷食だんじき祈禱いのりをなし』。十六章廿五節夜半よなかごろパウロとシラス祈禱いのりをなし』。二十章卅六節ひざまづき衆人すべてのものと共に祈れり』。廿一章五節『共に岸にひざまづきて祈り』。どうぞ深くこの引照を考へて御祈おいのりなさい。これによりて祈禱いのりの必要なる事、何時いつでも、何處どこでも祈らねばならぬ事を知ります。敎會はその祈禱いのりを献げました時に、其爲そのために惠まれました。神は祈禱いのりに答へて何時いつでも新しいあぶらを注ぎ、新しい力を與へ給ひます。私共わたくしどもそれに從ひますれば、昔の敎會のやうに日々に神のめぐみと神の榮光さかえを見る事が出來ます。

神のはたらきを務むべき人

三節

 この三節を見ますれば、このはたらきためにどういふ事が必要であるかについて、みっつ個條かでうがあります。第一は『善證よきあかしある者』、すなは悔改くいあらためない人々の前にも、よき生涯を送ってる正直なる者。第二は『智慧ちゑ滿みちたる者』すなわち物事をわきまへる常識のある人。第三は『聖靈に滿みちたる者』であります。かういふ人々が會計の事を務めなければなりません。敎會のはたらきを務めるのは、神のはたらきに親しい關係がありますから、それを務める者は聖靈に滿みたされてなければなりません。敎會の役員はかういふ人でなければなりません。うでありませんならばかへって敎會の妨害さまたげになります。例へばある人は正直で物がよくわかって會計を務めます。その人が聖靈に滿みたされてませんでも、神に祈る人でありませんでも、度々たびたび其樣そんな人を役員に選びます。ども私共わたくしども三節のやうな人を役員に選ばなければなりません。うしますれば必ず神の祝福を受ける事が出來ます。

愛の勝利

五〜七節

 五節を見ますれば皆一致しました。『このことばすべての人の心にかなひければ』とあります。すなはち皆一つの心と一つのかんがへもって一致しました。これじつに聖靈のはたらきうるはしいしるしであります。又それのみならず、その七人を選ぶ時に、どういふ人を選びましたかならば、矢張やはりギリシヤ方言ことばのユダヤびとをのみ選びました。これじつうるはしい事であります。この選ばれました七人の名を見ますれば、皆ギリシヤ語の名前でありますから、必ず皆ギシリヤ方言ことばのユダヤびとであったに相違ありません。其中そのうちの一人は猶太人ユダヤびとではありません。すなはをはりの人は異邦人でありました。どもはじめ割禮かつれいを受けて猶太人ユダヤびととなり、次に基督敎キリストけうに入った人でした。うですから其時そのとき既に敎會のうちに異邦人の信者がありました。ギリシヤ方言ことばのユダヤびと怨言つぶやきました時に、敎會全體がその人々のうちより是等これらの人々を選んで、會計をゆだねました。これによりてその信者の寛容と、廣い心と、罪を赦す心とを知る事が出來ます。敎會のうちにがい感情が起りました時に、この信者等しんじゃたちはどうしてそれを消しましたかならば愛をもっその怨言つぶやいた者を信用して、これに會計を委ねた事によりて、それ追出おひだす事を得ました。怨言つぶやいた者はほかの信者を信用する事はむづかしい事でした。れどもほかの信者は怨言つぶやいた者をよく信用する事が出來ました。これじつに愛の勝利でありました。其爲そのためにサタンに企圖くわだてに勝つ事を得ました。其爲そのためこのにがかんがへを全くきよめて、敎會を助ける事を得ました。其爲そのためうるはしい結果が起りました。

 七節『神のみちいよいよ傳播ひろまり弟子等でしたちかずヱルサレムにはなはだしくまさり』。これは敎會がきよめられた結果でありました。敎會より怨言つぶやき逐出おひだし、一致和合する事を得ましたから、ぐ力と愛をもっそとの人に福音を宣傳のべつたへ、罪人つみびとを救ふ事が出來ました。又案外にも『祭司も多く信仰のみちに從へり』。これはじめてゞあります。今迄いまゝで悔改くいあたらめた事がありませなんだが、今此時このときに祭司が多く悔改くいあらためました。これは敎會が新しい力を得ましたから、今迄いまゝで頑固かたくなな心をってた人をも導く事が出來たのであります。これじつ幸福さいはひであります。敎會がきよくありますならば、又愛をもって全く一致してりますならば、必ず勝利を得て、頑固かたくななる心をってる人々は碎かれます。

 この祭司等さいしたちしゅイエスが十字架につけられ給ひました時、神殿みやまくが上より下まで裂かれた事を覺えてましたでせう。其時そのときの祭司は必ずそれを感じたに相違ありません。そのまくじつに厚いもので、厚さは三寸餘りもありましたから、それが裂かれた事は人間の力でなくして、たゞ神の御力みちからであるとわかりましたでせう。又上より裂かれましたから、格別に神の御手みてによりて裂かれた事がわかります。又今迄いまゝでそのまくため至聖處しせいじょはいる事が出來ず、又神の御榮光みさかえを見る事が出來ませなんだが、只今たゞいま祭司でもたれでも、その至聖處しせいじょりて神の御榮光みさかえを見る事が出來るとわかりまして、しゅイエスの死のためみたまめぐみを得られると感じましたでせう。今此時このときに種々の證據がありましたから、つひに大勢の祭司がみちに從ひました。

みっゝの聖靈の盈滿えいまん

 今迄いまゝでところに聖靈に滿みたされる事について、みっゝの事が記されてあります。第一、三節に『聖靈と智慧に滿みちたる者』とあります。聖靈に滿みたされました格別の結果は智慧、すなはち靈的智慧に滿みたされる事であります。私共わたくしどもが聖靈を受けますならば、格別にれいれる智慧をはずであります。第二は五節『信仰と聖靈の滿みちたるステパノ』。すなはち聖靈に滿みたされてりますれば、格別に信仰があるはずです。山を移す事が出來る信仰があるはずです。天より火を呼下よびくだす事が出來る信仰があるはずです。第三に八節めぐみ能力ちから滿みちて』。聖靈に滿みたされてますならば、必ずめぐみがあります。優しい心、しゅ聖意みこゝろかなふ心、柔和なる心、又へりくだれる心、愛の心があります。又必ず能力ちからもあります。サタンのわざ打碎うちくだく事の出來る力があるはずです。又病人をいやす力、鬼を逐出おひだす力をってはずです。私共わたくしども荏弱よわきを感じ、不信仰を捨てゝそれを求めなければなりません。このみっゝの引照によりて、聖靈に滿みたさるゝ事の結果を知る事が出來ます。どうぞ私共わたくしどもそれを經驗したいといふ事ばかりでなく、その經驗が能力ちからある結果となってあらはれる事實でなければなりません。



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